74.違和感のある人選
「驚きました……どうやら、彼はかなりの力を持っているようですね」
「そうですか……」
マルギアスさんは、私の傍まで来てそのようなことを呟いていた。
私は、グーゼス様がどれだけの力を持っているかは知らない。それを実際に受けたことはないからだ。
しかし、彼はかなりの巨体である。人並み外れた力を持っているであろうことは、想像に難くない。
「ありがとうございます。ルルメアさんの手助けがなければ、危なかったかもしれません」
「いえ、気にしないでください。私も、マルギアスさんが受け止めてくれなければ、逃げ切れなかったかもしれませんから」
「そうですか……お互いに協力し合って、彼を倒しましょう」
「はい」
私とマルギアスさんはそのように会話を交わしながら、前方のグーゼス様の方を見ていた。
彼は、再度こちらに向かってきている。やはり、あの程度の攻撃では少し怯ませるくらいしかできないようだ。
「マルギアスさん、少しの間だけ彼を引き付けられますか?」
「……できなくはないと思います」
「それなら、お願いします。私は、新しい魔法の準備をします。先程のような光の球くらいは出せますから、いざとなったら私も補助しますから」
「わかりました。それでは下がっていてください」
「はい」
マルギアスさんのグーゼス様を任せて、私は後退する。
彼はもう燃やしても無駄だ。それなら、別の手を考える必要がある。
その手は、既に思いついている。だが、彼の巨体をどうにかするにはどうしても時間がいるのだ。だから、マルギアスさんにしばらく彼を引き付けてもらうしかない。
「まだ邪魔をするのか!」
「ルルメアさんにあなたを近づけさせる訳にはいきません」
「ならば、死ねぇ!」
グーゼス様が振り下ろした左手を、マルギアスさんは軽い足取りでそれを躱した。
続いてくる右手に対して、彼は剣を構える。そちらは、受け止めるつもりのようだ。
「行きますよ!」
「む?」
マルギアスさんは、そのまま爪に刃を滑らせて、グーゼス様の懐に飛び込んだ。
一瞬の出来事に、グーゼス様も対応はできなかったようである。そのまま、彼の体に剣が走っていく。
「はあっ!」
「がああっ!」
マルギアスさんの剣が横に払われて、グーゼス様の体が真っ二つになった。
しかし、その体からは触手が出て来て、すぐに二つの体を繋ぐ。
あれも、彼の体の厄介な性質だ。切っても切っても再生する。あのせいで、彼に剣技は通用しないのだ。
「……え?」
しかし、そこで私は違和感を覚えた。
彼に剣技は効かない。それなら、どうして私の護衛はマルギアスさんだったのだろうかと。
彼が剣技に秀でているだけなら、この任務には適任ではない。切っても再生する敵に、彼をぶつける意味がないのだ。
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