66.新しい護衛
私は、馬車に乗って移動していた。
この馬車は、騎士団が手配してくれたものだ。この馬車で、私はとある別荘に行くらしい。
そこで、私は騎士団の護衛とともに、しばらく生活することになる。化け物となったグーゼス様が私を狙っているため、そのような軟禁生活を送ることになるのだ。
「本当に申し訳ありません。苦しい生活になると思いますが、どうかお許しください」
「い、いえ……」
私は、その話をしてくれたとある騎士から頭を下げられていた。
彼の名前は、マルギアスさん。今回の護衛任務についている騎士の一人である。
ドルギアさんは、何やら色々と報告があると王都に向かった。代わりに、私につくことになったのが、彼なのである。
「そんなに謝らないでください。こちらとしても、護衛していただけるのはありがたいことですから」
「そう言ってもらえると、こちらとしては助かります」
マルギアスさんは、とても丁寧な人だった。私のことを気遣ってくれるし、とても紳士的だ。
もしかして、彼は私がズウェール王国の聖女だと知らないのだろうか。そんな訳はないのだが、そう思う程に、彼は私を一市民として見ている節がある。
「あの……マルギアスさんは、私がどういう人間かということを知っていますよね?」
「どういう人間か? 人間性ということでしょうか? それは、まだわかりませんね。出会ってから、そこまで時間が経った訳ではありませんから」
「いえ、そういうことではなく、私がズウェール王国の聖女だったという事実のことは把握されていますよね?」
「ええ、もちろんです」
念のため聞いてみたが、彼は私のことをしっかりと把握しているらしい。
それなら、少しくらい警戒心だとかそういうものがあるものではないのだろうか。こんなにも柔らかな対応には、どうにも違和感がある。
「それに対して、何か思う所なんかはないんですか?」
「まだお若いのに、偉大な職業に就いていたあなたに対しては、尊敬の念を覚えます。ありがたいことに、私も騎士団においてはそれなりに評価していただいていますが、もっと頑張らなければならないのだとそう思いました」
「そ、そうですか……」
マルギアスさんは、とても真っ直ぐな言葉を私に返してきた。
なんというか、彼はとても眩しい人だ。こんなにも真っ直ぐに前を見据えている人なんて、中々いないだろう。
年齢的には、私の方が下だと思うが、もう私はこんな真っ直ぐに未来を見ることはできそうにない。そう思う程に、彼の気質は清々しいものである。
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