24.これから住む場所
私は、セレリアさんの案内でセリーエさんの元に向かっていた。
彼女は、マンションなどを管理しているらしい。サルドンさんからの信頼も厚い人物であるそうだが、一体どんな人なのだろうか。
「父は、昔セリーエさんにとてもお世話になったそうなんです。この町に来てお金がない時、かなり良くしてもらったそうで……まあ、姉とかお母さんとか、そういう感じの人であるそうですよ?」
「サルドンさんは、この町の出身ではなかったのですか?」
「ええ、田舎からこの町に来て、それで商人になったそうですよ。珍しいパターンですよね……」
「そうですね……」
セレリアさんは、サルドンさんの身の上話を語ってくれた。
彼がこの町の出身ではないことも、そもそもナルキアス商会が一代で築き上げられたというのも、私は初耳である。
ということは、彼はかなりのやり手であるということだろう。いや、それはわかっていたことなのだが。
「私や兄にとっても、彼女は伯母さんみたいなものですね……彼女、今でも会う度にお小遣いを渡してくるんですよ? まあ、受け取りませんけど……」
「いい人なんですね……」
「ええ、そうなんです」
話だけ聞いていると、セリーエさんはとてもいい人のように思える。多分、その認識は間違っていないだろう。これで悪い人だったら、むしろ驚きである。
「さて、ここですよ」
「ここが……」
そんな話をしている内に、セリーエさんのマンションに辿り着いていた。
目の前には、新築という訳ではないが古びているという訳でもないマンションがある。ここが、これから私が暮らす場所ということなのだろう。
「あら? もう着いたのね」
「あ、セリーエさん」
「セレリア、久し振りね」
私がマンションの方を見ていると、初老の女性がこちらにやってきた。柔和な雰囲気の女性は、ゆっくりとした足取りでこちらに歩いてくる。
どうやら、彼女がセリーエさんであるようだ。なんというか、想像していた通りの優しそうな女性である。
「それで、あなたがルルメアさん?」
「あ、はい。ルルメアです。よろしくお願いします」
「なるほど……あなたが、スライグの……」
「うん?」
セリーエさんは、私を見て嬉しそうな笑みを浮かべていた。呟いた名前も合わせて、私はなんだか嫌な予感がする。
「ねえ、セレリア? 実際の所、どうなの?」
「そうですね……まあ、まあまあという感じです」
セリーエさんは、セレリアさんとそんな会話を交わした。やはり、彼女は私のことを少し勘違いしているような気がする。
サルドンさんは、一体私をどのように説明したのだろうか。もしかして、スライグさんが連れてきた女性とか言ったのだろうか。
別に、それは間違っていない。ただ、もしそうだとしたら、少し語弊があると思うのだが。
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