23.道案内は
私は、ナルキアス家の屋敷の玄関に立っていた。
目の前には、ナルキアス一家の面々が並んでいる。私を見送りに来てくれたのだ。
「セレリア、ルルメアさんをよろしく頼んだぞ?」
「兄さんじゃないんだから、大丈夫よ」
「それは……そうなんだが」
協議の結果、私の道案内はセレリアさんがすることになった。
スライグさんには他に役割があるから、という理由ではなく、彼では道案内は不可能だと判断されたのだ。
流石に自分が生まれ育った町で迷うことはないだろう。私はそう思って、彼に案内してもらおうと思ったのだが、それはセレリアさんに止められたのである。
「えっと……ルルメアさん、仕事の件は、お伝えした通りです。明日、渡した地図に書いてある場所に行ってください」
「はい、わかりました」
私の仕事に関しては、明日面接をすることになった。
トゥーリンさんの店は、定食屋さんであるらしい。弟のナーゼスさんと一緒に営んでいるそうなのだが、人手が欲しいと嘆いていたそうなのだ。
そこに、丁度そういう店で働きたいという私が現れたということらしい。要するに、タイミングが良かったのである。
「これから大変だとは思いますが、どうか頑張ってください」
「はい。スライグさんも、どうかお元気で」
私は、スライグさんとそう挨拶を交わした。
彼は、笑顔だった。私を明るく見送ってくれるつもりなのだろう。
だから、私も笑顔を浮かべた。別れは寂しいが、会えなくなる訳ではない。そのため、笑顔で別れるべきだろう。
「セレリア、セリーエによろしく伝えておいてくれ」
「ええ、任せて、父さん」
「ルルメアさん、また何かあったらいつでも私を頼ってくるといい。スライグも喜ぶからな」
「と、父さん?」
サルドンさんは、そう言って笑っていた。
なんというか、彼もセレリアさんもずっとスライグさんをからかっている。やはり、家の中ではそういう立場なのだろうか。
「ずっと違うと言っているだろう? いつまで、それを……」
「だが、スライグよ。お前は、現に旅先で出会った女性を家に連れて来ているのだぞ?」
「いや、それはそうだけど……」
スライグさんは、サルドンさんの言葉に反論できなかった。
確かに、事実としては彼の言う通りである。スライグさんは善意でやったことだが、状況的には言い逃れできないだろう。
「……ルルメアさん、そろそろ行きましょうか? 二人の言い合いを待っていると、日が暮れてしまいます」
「そ、そうですね……お二人とも、それでは私はこれで。本当に、色々とありがとうございました」
「ルルメアさん……ええ、また会いましょう」
「うむ」
最後にそのような言葉を交わして、私は二人と別れた。
こうして、私はセレリアさんとセリーエさんの元に向かうのだった。
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