14.賑わう町
私は、アルヴェルド王国のとある都市グランゼンに来ていた。
ここが、スライグさんとセレリアさんが育った町、ナルキアス商会の拠点となっている都市なのだ。
「賑わっていますね……」
「そうでしょう……自分で言うべきではないかもしれませんが、この都市の発展にはナルキアス商会が大きく関係しているのですよ?」
「そうなんですね……」
グランゼンは、とても賑わっている町だった。それは、ズウェール王国の王都に勝るとも劣らない程である。
言い方はあまりよくないかもしれないが、この盛り上がっている都市を裏で牛耳っているのが、ナルキアス商会ということなのだろう。
大きな力を持つ商人というのは、ズウェール王国でもいる。そういう人達は、大抵多大な影響力を持つものだ。
「それにしても……ナルキアス商会が、ここまで大きいのなら、お二人はもっと楽な方法でズウェール王国に来られたのではないですか? 例えば、個人用の馬車を手配するとか……」
「ああ、それは、お金の問題ですよ」
「お金の問題?」
「つまり、それではお金がかかり過ぎてしまうということです」
「ああ……」
疑問に対するスライグさんの答えを聞いて、私は少し苦笑いした。
そういえば、ナルキアス商会の親子はケチだったのだ。移動時間や乗り換えなどの面倒なことより、お金がかからない方を優先したようである。
「ルルメアさん、前にも言ったとは思いますが、面倒でしょう?」
「まあ、確かに……」
セレリアさんの言葉に、私は頷かざるを得なかった。なんというか、ここまでお金のことについてこだわりがあるのは面倒だ。
ただ、そういう面があるからこそ、商人として大成できるのだろうか。日常生活では面倒でも、商業においてはそういう面も役に立つのかもしれない。
「さて、見えてきましたよ。あそこが、僕達の家です」
「あれが……」
そこで、スライグさんがそんなことを言ってきた。彼の指先には、それなりに大きな家が見える。どうやら、あれが二人の家であるようだ。
家の大きさとしては、それなりの大きさである。貴族の家といわれても、納得できる程だ。
「家とか、そういうのにはお金をかけるんですよね……まあ、この間のルルメアさんが言っていたように、お客様が来た時に、見栄を張る必要があるということなのかもしれませんけど……」
「ああ……」
セレリアさんの言葉に、私は気づいた。確かに、二人の父は、家に関してお金を使うことを渋ってはないようだ。
外装も綺麗だし、手入れされていることがわかる。恐らく、彼女の言う通り、それは見栄なのだろう。
誰かが来た時、家を見て舐められたくはない。そういう観点から、家の整備は欠かさないのだろう。
そういう面を見ていると、単にケチというだけではないような気がしてくる。やはり、その主義は商人としての生き方なのだろうか。
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