7.去る者達(モブ視点)
エルーシャとレイオスは、行動を開始していた。部下達に、今回の事件を機に自分達も王城を去ると告げること。それが、彼らが最初にしたことである。
「つまり、聖女様に続いて、レイオスさんもエルーシャさんもいなくなるんですか?」
「そんな……」
レイオスが事実を告げると、部下達はそのような反応をした。一言で言い表すなら、それは絶望といえるだろう。
エルーシャやレイオスだけではなく、この王城で働く者達のほとんどが、ルルメアが去ったことにショックを受けていた。それに続いて、二人まで去る。それを聞いて、かなり困惑しているのだろう。
「……俺は、お前達の人生を背負うことはできない。だが、一つだけ告げておく。ここに無理をして残る必要などないのだぞ?」
「え?」
「それは……」
そんな部下達に、レイオスは告げることにした。ここにいる必要が、ある訳ではないのだと。
それは、彼がエルーシャと話したことによって得た結論だ。それを部下に伝えることが必要だと、彼は思ったのだ。
「お前達にも家族がいることはわかっている。だが、それを守りたいからといって、自らを犠牲にする必要はない。もしも限界であるなら、お前達もここから去ればいい」
「し、しかし……そんなことをしていいのでしょうか?」
「いいか悪いかは、自分で決めることだ。最早、この場所はそういうものだろう」
レイオスの発言に、部下達は目を丸くしていた。その選択を取っていいのかと、驚いているのだろう。
その様子に、彼は思った。きっと、ここで働いている者達は視野が狭くなっているのだろうと。
それは、彼自身も同じだった。どうして、もっと早くここから去ろうと思わなかったのか、今となっては彼もそれが理解できなかった。
それに気づけたことは幸いだと、レイオスは思った。心残りは、それをルルネアが去る前に気づきたかったということだけである。
「さて、それでは俺は他の者に伝えに行く……お前達が、どうするかは、これからゆっくりと考えるがいい」
レイオスは、それだけ言って部下達の元から去ることにした。
その後ろでは、沈黙が続いている。だが、誰かが口火を切ってくれるだろう。そう思って、レイオスは振り返らない。
「皆の結論は、恐らく同じだろうな……」
レイオスは、一人でゆっくりとそう呟いた。
結論はわかっていた。その結論以外に、辿り着くとは思えないからだ。
その結果何が起こるのか、それをレイオスは理解している。だが、それでも止まるつもりはない。そんな義理も彼の中にはないのだ。
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