3.偶然の出会い
私は、ズウェール王国を出て行くことにした。
とりあえず、私は隣国のアルヴェルド王国に向かうことに決めた。特にこだわりはなかったのだが、とりあえず自由そうな国に向かうことにしたのだ。
アルヴェルド王国は、いい国だと聞いている。もっとも、それが真実かはわからない。ズウェール王国だって、別に悪い国として評判が広がっている訳ではないからだ。
「でも、とりあえず、行ってみないとね……」
一つだけ確定しているのは、これ以上ズウェール王国にいたくはないということである。
という訳で、私はアルヴェルド王国方面に行く馬車を待っていた。ここには、大型の乗合馬車が定期的に来ている。時間通りなら、もう少しで来るはずだ。
「……お嬢さん、少しよろしいでしょうか?」
「え?」
そんな私に話しかけてくる人がいた。
それは若い男性だった。見たことがない男性である。一体、どうして私に話しかけてくるのだろうか。
「ここに来る馬車は、どちらに向かうのでしょうか?」
「え? ああ、ここに来る馬車はランペルドに向かいますよ」
「ランペルド……なるほど、それなら目的地です」
「そうですか」
どうやら、男性は道を尋ねたかっただけのようだ。別に、隠す必要があることではないので、私は普通に教えることにした。
それから、男性は私の横に立った。馬車を待つということなのだろう。
「……この辺りには、初めて来るのですか?」
「え? ええ、そうですね……初めてです」
なんとなく、私は男性に話しかけていた。気を紛らわすために、世間話でもしようと思ったのだ。
男性は、少し驚いたもののすらすらと答えてくれた。彼も馬車を待つ時間は暇なので、話には乗り気のようだ。
「ズウェール王国の王都は、とても活気に溢れていますね。いい所だと、そう思います」
「そう、ですか……」
男性の王都評に、私は少し言葉を詰まらせることになった。いい所、それが引っかかってしまったのだ。
しかし、それは別に彼は悪いことを言っている訳ではない。確かに、王都は活気に溢れている。その裏に何があろうと、それは事実なのだ。
「……ズウェール王国の王都?」
その直後、私はとあることに気がついた。
彼は今、ズウェール王国の王都と言った。それは、なんというか引っかかる言い回しだ。
彼は、あえてズウェール王国とつけた。それは、彼が国外から来た人間であることを表しているのではないだろうか。
「別の国から来たのですか?」
「ええ、アルヴェルド王国から来ました」
「アルヴェルド王国から……」
男性の言葉に、私は驚くことになった。私の目的地から来た人と、まさか出会うなんて思っていなかったからである。
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