第4話 紺とお友達。

「紺。今日は未桜さんときなこちゃんが遊びに来るよー。」

紺が来てから何度目かの休日。

今日は未桜さんが愛猫のきなこちゃんを連れて、初めて紺と対面する日となっていた。

未桜さんとはもう何度か遊んでるため、紺も心を許している。

ピンポーン。

普段あまりならないチャイムの音に紺がビビり、カーテンの裏に隠れていく。

「紺、未桜さんたち来たよ。お出迎えに行こう。」

優しく紺を抱き上げ、私は玄関のドアを開けた。

「紺君、こんにちは!」

玄関を開けると、未桜さんとキャリーバックの中に入っているきなこちゃんの姿があった。

「未桜さん、きなこちゃんいらっしゃい。」

2人を中に招く。紺は、未桜さんが持っているバックの中にいるきなこちゃんが気になるらしい。

リビングに着いて、バックのカギを開ける。

きなこちゃんが家に来るのは初めてではないが、紺が来てからは初めてなのでお互い少し警戒してるようだ。

「紺もきなこちゃんも緊張しなくて大丈夫だよ。」

「そうそう。きなこもいつも通り過ごしな。」

未桜さんの言葉に、きなこちゃんがいつもの定位置である机の椅子に歩いていき座り込んだ。

紺はきなこちゃんの事をじっと見つめるが私のそばから離れない。

「紺。きなこちゃんは未桜さんの家族だよ。怖がらなくて大丈夫だから挨拶しておいで。」

きなこちゃんも元は野良猫。数年前に未桜さんが拾って育てている。

「きなこは警戒心強いからなぁ。仲良くしてくれるといいんだけど…。」

きなこちゃんを保護して一ヶ月位は大変だったらしい。

最初のころは近づくだけで警戒されて威嚇されるし、エサもなかなか食べてくれなかったとか。

それでも未桜さんが諦めずに毎日愛情を注いだお陰で、きなこちゃんも心を許してくれたらしい。

私に懐くのにも一ヶ月位かかった覚えがある。

「さぁ、猫の事は猫たちに任せて私たちはお茶でもしよっか。」

「そうですね。」

私は未桜さんが持ってきてくれたお菓子を預かり、お気に入りの珈琲を淹れる準備を始めた。



あれから数時間後。

時刻はお昼の一時を指していた。

「そろそろお昼にする?」

「そうですね。紺やきなこちゃんもお昼あげないと。」

ソファから立ち上がって、猫たちの姿を探す。

きなこちゃんは変わらず定位置にいて、紺はきなこちゃんが気になるのか椅子の近くに伏せて観察していた。

「仲良くなるにはもう少しかかりそうですね。」

「そうだね。でも、喧嘩はしなさそうだし良かった。」

お互い、愛猫のご飯の準備をしてから自分たちもお昼を食べることにした。



お昼を食べた後は、テレビゲームで遊び時間はあっという間に過ぎた。

「もうこんな時間か。きなこと紺君はどうしてるかな。」

ゲームをしてる間、二匹ともすごく静かだった。きっと午前中と変わらずの光景なのかなと机の椅子の方を見てみると、二匹の姿は無かった。

「唯、こっち見て。」

未桜さんの指さすほうを見ると、そこにはビーズクッションの上で仲良くくっついて寝てる二匹の姿があった。

「この子達、見てない間に一体何があったのかしら…」

「謎ですけど…でも、仲良くなってくれたってことでいいんですかね?」

私達は顔を見合わせて静かに笑いながら愛猫たちを優しい眼差しで見つめた。



この後、未桜さんたちが帰る時間になり二匹とも離れたくないと手の届かないところに逃げたのはまた別の話。

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