第7話 兵隊の襲撃、戦闘

 数か月経った頃、彼女らはかなり上達していた。


葵は持って来た刀を二人に渡して使用・手入方法を教えた。

短期間なので簡単に教えた。


最後に宝刀を持つ娘を決めなければ成らなかったが、葵は決めていた。

積極性、行動力でアリーナが適していると、そして2人を呼んで伝えた。


アリーナは喜んでいた。


アイラは落胆していると思ったが自分の事のように喜んでいた。


アリーナに何かあった場合を考えて2人に宝刀の扱い方を教える事にした。


葵は宝刀を持ってきて刀身を抜き、光って消えたら仕舞う処までを実際に行った。


宝刀の光りに2人は暫く唖然としていた。


後は宝刀の扱い方を教えた。

 

 ある時、部族の男達が草原に群れでいる毛の長い牛の狩りに出かけた。


何時ものようにアリーナとアイラが外で稽古を始めた時、高いラッパの連続音が聞こえた。


葵は初めて聞く音に驚き、外に出て丘の下の方を見た。


騎兵隊が横十列位になり、銃を構え、または剣を抜いて突進してきた。


縦に十列位はある、高いラッパの連続音は鳴り響いていた。


部族のテントでは女・子供が右往左往していた。


娘二人はラッパの音を聞き、兵隊の襲撃と気付きテント中に入ってきた。


戦いたいと主張したが、兵隊の数が多いので宝刀を持って、裏から馬に乗り逃げるように伝えた。


葵は出来るだけ時間を稼いでから娘達の後を追うつもりだった。


部族の弓と矢を用意し隠れてた。


叫び声を発し、発砲しながら1列目が突っ込んできた。


右往左往していた女・子供はあっと言う間に殺された。


葵は数本の矢放ち、数人の兵隊を倒したが発見されて銃撃された。


葵は寸前で避けて、テントに入り刀を持って裏に出た。


その頃には部族の男たちが戻ってきて銃撃戦が始まっていた。


娘二人が逃げて行くのを見られていた、最初に突撃した十人ほどの兵隊が後を追って行った。


葵は馬に乗りその後を追った。道は下りになっていて、娘達とそれを追う兵隊の姿は遠くに見えていた。


道が狭いので兵隊は1列になって追っている。


少しずつ近づき葵は弓を引いた。

列の最後の兵隊を狙って矢を射ると背中に命中し馬から落ちた。


次の兵隊も後ろを向き腰の銃に手に掛けたが、一瞬早く射ると馬から落ちた。


後ろの異変に気が付いた先頭の隊長らしき男が、後を向き手で指示をすると3名の兵隊が速度を落とし、反転し向かって来た。


葵は一旦止まり、道の横の斜面に駆け上がり、弓を引き向かって来る兵隊に三本の矢を束ねて射た。

矢が当たり、三人の兵隊は馬から落ちた。


葵は馬から降り、生死を確認した。二人は絶命していたが、若い兵士は矢が腕に刺さり呻いていた。兵士は赤い袴の葵を見て恐れ慄いていた。


葵は矢を抜き、馬に乗せ行かせた。


その頃追い詰められたアリーナとアイラは馬から降りて5人の兵隊と対峙していた。


アリーナはゆっくりと宝刀と刀を抜き頭上に交差させていた。


宝刀が光っているので兵隊からは瞬間女神に見えた。

アイラはアリーナの後ろに隠れていた。


「部族の踊りか、もう降参しろ、そしたら楽しんやるから・・・・」と言いながら一人の兵隊がサーベルを抜き近づいて行った。


その時にはアリーナは宝刀を背中の鞘にしまい刀を中段に構えていた。


兵隊がサーベルでアリーナを突いたが堅い殻に守られアリーナの体に届かない、力でサーベルが曲がった。


兵隊はサーベルを引こうした瞬間にアリーナに腹部を刺された。


兵隊の悲鳴と同時にその光景の恐怖に、馬に乗ったままの兵隊が一斉射撃をした。

その音は雷鳴のようだったが、弾は全部跳ね返りその場に落ちた。


この時アリーナは気が付いた。この堅い殻は外から中へ刀も銃弾も通さないが、中から外への攻撃は自由にできると。


何回か一斉射撃をしたが弾は全て跳ね返され、弾が尽きたので、兵隊は馬から降りてサーベルを抜いて近づいてきた。


そして2人が一緒に突いてきたがアリーナの体の堅い殻に跳ね返された。


逆にアリーナは一人を差し返し、もう一人を袈裟掛けに斬った。


隊長ともう1人の兵隊はアイラを狙って右側から後ろに廻った。


アイラは葵の稽古通り突いてくる兵隊のサーベルを払い腹部を刺したが、その隙を狙った隊長のサーベルが横からアイラを刺そうとした。


それに気づいたアリーナは体を廻し、隊長のサーベルをめがけて刀を振り降ろした。


サーベルが折れ、座り込む隊長にアリーナはすばやく胸を刺し絶命させた。


暫くすると葵がやってきた。


廻りの状態を確認して「大丈夫でしたか?」と聞いた。


「大丈夫です、私が4人をアイラが1人倒しました。宝刀の力は凄いです」とアリーナが興奮して答えた。


宝刀の力があっても短い間に5人の兵隊を倒した。上達しているのは確かだった。

ただ最初の戦いで躊躇なく4人を殺傷する精神力の強さが気になったが、目標に近づいていることは葵に取って嬉しかった。


最初の戦いでアリーナは高揚していたが、アイラは青い顔をして憔悴しているようだった。

葵はアイラに近づき、そして肩に手を置いた。

「人を殺すのは辛いことですが、殺さないと殺されると思い戦って欲しい、アイラにとって最初にこの修羅場は大変だったと思う。今日一人倒したから自信を持って」と優しく話した。

アイラは自信なさそうに頷き、葵に抱きついた。葵はアイラの頭を撫ぜて安堵した。


部族の男達が狩りから戻って兵隊と戦っていると伝えると、アリーナは戦いたいとアイラと戻って行った。


村に戻ると兵隊は引き揚げていた。


「この襲撃で二十人程の女・子供が無残にも殺された、ここにいても悲劇を繰替えすだけ、他の部族が集まっている西の方に移動する。そこに行けば今より襲撃されることは少ないだろう」と部族長は言い、テントを畳み西への移動の準備を始めた。


兵隊が襲撃し部族はその土地を追われる、それを繰り返しながら部族を西か北へ追い詰める。


葵は部族が戦って勝てる相手ではない、部族の最後はどうなるのか不安になってきた。


移動する前に葵は部族長・祈祷師・主な部族の男達に集まって貰いアリーナに宝刀を渡すと報告した。

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