第26話


「ギル……さま……?」


相変わらず爽やかで、光を受けた銀髪が眩い。じっと見つめられるとなんだかむず痒い気持ちになる。


「やっぱりリリアか。久しぶりだな。元気にしていたか? 君の父上ともなかなかお会いする機会がなく、様子を聞くことができなくてな」


あんなことがあったのに、こうして気さくに声をかけてくださる。本当に、優しい方。この世界にきて、ゲームの画面を通じてではなかう、直接交流をしたことでより強く感じる。


「ご無沙汰しておりまして申し訳ございません。父もわたくしも、変わりなく過ごしております。ギルさまは学園生活、いかがお過ごしですか?」


クラリスから叩き込まれた礼の作法、カーテシーをしてから、少しだけ最近のことを聞く。ヒロインの聖女さんとどうなったのか、少しだけ気になっていたから。


「どうしたんだ、そんなに畏まらないでくれ。昔のリリアのままでいて欲しい。学園は、そうだな、退屈だ」

「え? 退屈、ですか……?」


聖女がまだ、アプローチをしていない? でももう、出会いから二か月弱は経っているはずなのに……?


「ああ、既に理解していることを改めて学ぶのは退屈だ。それに、リリアのように心を開いて話せるような相手もいないしな」


確かに、【聖女と12人の騎士】でも、ギルは成績優秀なキャラクターでもあった。それにしても、そろそろ聖女とは上辺だけじゃなくて少し深い話もできるようになっているはずなのでは……? ちょっと、探ってみようかしら……。


「ギルさま、そのように言っていただけるとは光栄ですわ。わたくしもギルさまとお話する日々が楽しかったです。ところで、今日はお一人でどちらに行かれるのですか?」


ギルはたった一人で歩いていた。立場もあるし、基本的にお付きの方も追随して馬車で行動するはずなんだけれど。


「ああ、今日はちょっと気分転換をしたくて、一人にさせてもらったんだ」

「気分転換、ですか。何かあったのですか?」


純粋に、どうしたんだろう? と思う気持ちが声に出てしまった。

ギルは少しだけ逡巡したのち、表情を引き締め、私をじっと見つめてくる。


「リリア、ひとつ頼みたいことがある」

「わたくしがご協力出来ることでしたら……」


なんだろう。こんなに真剣な表情をするということは、結構ヤバい感じのこと……?

ていうかギルのお願いごととか、ちょっとハードル高そうじゃない……? 無理なことだったらちゃんと断るからね⁉


「助かる。大丈夫だ、むしろリリアが適任だ」

「適任?」

「ああ。俺と、舞踏会に出て欲しい」

「――――!?!?」

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