第10話 リオと真実の愛
「なんでそこまで」
「愛してるから?」
きょとんとした真面目な顔が、もう作られたものだとわかっている。
わかっているのに、アルバの心臓は大きく跳ねる。
「もう、それやめてくれませんかね!?」
今まで通りのリオの口調、リオの仕草。
なのに成長した彼がそれをすれば、妙に色っぽくアルバの許容範囲をあっさりと超えてくる。
私は綺麗なものが好き。可愛いものも好き。
だけど、見ているだけで十分なのよ。
直接関わろうなんて思ってないの!
そんな思いを知ってから知らずか、リオがアルバの手を取る。
おねだり上手な青い瞳は健在で、アルバは意識を逸らすので手一杯だ。
笑みを浮かべるリオに魂を削られたアルバだったが、はっとした。
「え、だけど、今は大きくなってるじゃ」
どう見ても九歳ではなく、立派に大人である。
「そうなんだ! それが占い師の言う『真実の愛』かな。驚いたよ。退院して帰ったその日、大人になったんだ。たぶんこれが本来の僕なんだろうね。手は大きくなって、脚も伸び、背も高くなった。もちろん声も違う。目線も変わって、全てが別世界のようだった。運命だと思ったよ、アルバと出会えたこと」
これならアルバに釣り合うかな、と目を輝かせて喜ぶ領主の姿に、子供のリオが目に浮かぶ。
「まあ、三日に一日は子供に戻っちゃうんだけど。だから子供の時に、三日に一度だけアルバに会いに行ってた」
アルバを驚かせたくなかったし、もっと仲良くなりたかったし、会いたかったから。
しゅん、とリオは目を伏せた。
子供っぽい姿に、これまでの領主への鬱憤も収まっている。リオだとわかったのが大きかったのかもしれない。
少し落ち着きを取り戻して、アルバは話を整理した。
診療所から屋敷へ帰ると、大人の姿になった。ただ、
その頻度には心当たりがあった。
どんな病気でも、怪我でも、アルバの回復魔法は
呪いを解いたのは『真実の愛』ではなく、アルバの回復魔法。
納得した。
リオは『真実の愛』とやらに囚われているのだ。だから呪いを解いたアルバに執着を見せる。
「それは、私が治療で回復魔法を使ったからよ。『真実の愛』なんかじゃない」
アルバの診療所にいたときはまだ体力が回復しておらず、呪いを跳ね除ける力が弱かった。
それが屋敷に戻ったタイミングで体力が戻り、本来の大人の姿になれたのだろう。
ただ、三分の二しか治せないアルバの回復魔法では、三日に一日は子供の姿になってしまうのだ。
「……ごめんなさい。私の力がもっと強ければ、完全に呪いを解けたかもしれないのに」
中途半端に呪いを解いてしまったせいで、リオは大人と子供を行き来し、アルバなんかに愛を語る。
『真実の愛』という言葉に惑わされて。
「そんなことない。そのアルバの力で僕は助けられたんだ。土砂崩れに巻き込まれた見ず知らずの僕を助けてくれただけじゃなくて、僕を大人の姿にもしてくれた」
真っ直ぐに向けられた好意を跳ね除けられないほど、もうすっかりリオには心許してしまっている。
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