第25話 美香さんのこと。−2

 ベッドシーツ…ちゃんと洗濯したのに、今は俺と美香さんの匂いが染み込んでいる。そして今日の美香さんはちょっと変…、先からずっとやられっぱなしで襲って来ない。これくらいやってあげたら、すぐ俺に乗っかって「今度は私の番だよ」とか言うのが今までの美香さんだった。


 なのに…、今日は全部俺に任せてずっと喘ぎ声を出しながら目を閉じている。


「はぁ…、気持ちいい…。シュシュ…、私を抱きしめて…」

「はい…」

「まだ…、抜いちゃダメ…」

「……エロい、そんなこと言わないでください」

「ドキッとしたでしょう…?年上の女子大生がこんなに甘えるのはどー?好き?」

「……よく分かりません」

「えーいっ!」

「痛い…!」


 体を起こして俺の首筋を噛む美香さんがついでにキスマークをつける。すると、くっついている美香さんの体からいい匂いがして…やはり俺は美香さんと繋がっている時が一番幸せだと思っていた…。今こうやってキスマークをつけるのも、俺の前で股を開くのも、抱きしめて嫌なことを忘れさせるのも、全部好き…。そして首筋の刺激に我慢できなかった俺のモノが美香さんの中で白い液体を出してしまった。


「……」

「何か私の中で暖かいのが出ちゃった…」

「ちゃんと使ってますから…、心配しなくてもいいんです…」

「もう…、噛まれただけで行っちゃったの…?」

「……だって、エロかったから仕方がなかったんです」

「見して!」


 俺からコンドームをもらっていく美香さんが目をキラキラしてその匂いを嗅ぐ。


「や、やめてください。汚いんです…」

「フン…、これが興奮したシュシュの体から出る液体かー」

「もう捨ててください…!」


 隣のテーブルにコンドームを置いて、美香さんが俺にキスをした。

 ベッドに横たわる二人は体を重ねてお互いの温もりを感じる。激しかったから少し蒸れるって言うか、美香さんと俺が汗をかいて肌と肌が張り付くような気がした。


「暑くないんですか…?」

「別に…?私はこうするのがいいのよー」

「フン…、今日はすごく甘えてきますね?」

「シュシュ…、私たちいっそ付き合っちゃおう」

「美香さんと…私がですか…?」

「うん…。どー?」


 付き合う…、俺と美香さんが…。

 嫌なことはセックスで忘れられる。これがあの時の美香さんが俺に言ってくれたこと、当時大学生だった女性が俺にそんなことを言うから新しい詐欺かと思っていた。こんなに綺麗な女性が俺みたいな人といやらしいことをやるわけないだろう…。でも、あの時の美香さんは俺の手首を掴んで高そうなホテルに連れて行った。


「どうして私ですか…。それだけの関係なら別に私じゃなくても…」

「君が美味しそうに見えたからね…?」

「……はあ…?」


 これは初めて見た男子高生を食べる美香さんが言った話。

 そしてぼーっとしていた俺は何もできず、服を脱いでいる美香さんを見つめていた。


「あれ?脱がない?そっかー!君はMだ!でしょう!」

「はあ…?一体何をしようと…っ」


 すぐ俺に乗っかって制服を脱がす美香さんに、あの時の俺は抗っていた。

 すると、ハサミを持ってきた美香さんがさりげなく俺の制服を切って、強制的に服を脱がそうとした。それにびっくりしてこの場から逃げようとしたけど、ハサミを持って「動いたらそれも切るよ」って言う美香さんに何もできず、じっとしていた。


「……」


 そして彼女と高級感が溢れるホテルのスイートルームでセックスをした。

 でも、あの日から俺たちはそれ以上の関係にならないことを…、約束したはず。会って、やって、別れる、これが俺たちの中にあるルールだった。なのに、美香さんは今付き合うって…、やはり何かあったようだな…。


「美香さん…」


 彼女の名前を呼ぶ時、俺のあごを持ち上げる美香さんがまたキスマークをつけてくれた。これでもう四つもできてしまって、明日学校にどうやっていけばいいのか心配になるくらいだった。


「やはりダメだよね…。私は付き合いたいけど、私と付き合ったら…シュシュが困るから…。そしてあの子もいるし」

「あの子って…?」

「ほら、この前に二人で喧嘩したじゃん…。マンションの前でさ?」

「見てたんですか…?」

「なんとなく…。でも、あの子はシュシュのことけっこう気に入ってるみたいだけど…?」

「……そうですか」


 こんな話に意味なんかないって俺たちはすでに知っていた。


「付き合わないなら私が先にもらおうかなって…」

「美香さん…、悩みがあったら私に話してもいいですよ」

「優しいね…。シュシュ…、でも先の話で分かった」

「はい…?」

「シュシュは本当に体だけってことを」

「……」

「それで安心したよ」


 そうだ…。美香さんは確かに美人だけど、俺には彼女と付き合う理由なんてないから…、俺たちはお互いにただ必要な存在。それは美香さんも同じだよ思う。


「……そう…ですか」


 そして最後を告げるように濃厚なキスをしてくれた美香さんが床に落ちているパンツを穿いた。その後ろ姿は今まで見たことがない変な雰囲気を出している。美香さんはなぜ何も言ってくれないだろう…。それが約束だったから、美香さんにそれ以上の話を聞くのはできなかった。


「シュシュー」

「はい」

「私、明日から連絡できないかもしれないよ」

「えっ?そうですか?大学のことで?」

「いや、他に…あるからね」

「はい。上手くいったらいいですね」

「うん…。じゃあ、私はこれで!またね。シュシュー」

「はい」


 そう言った美香さんは軽く唇を重ねた後、すぐ家を出た。

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