第22話 二人の関係。−2
「これはもしかして…、森岡が送ったL○NEなのか…?」
「……どう思いますか?」
うわ…、一応俺の友達だけどこれはちょっと汚くない…?しつこいのは知っているけど、そこまで強制的に何かをしようとL○NEを送るのは…友達だとしても庇ってあげられないことだった。この日付は俺と一緒に帰る時からか、じゃあ…ホラー映画を見ていた時のL○NEも森岡ってこと。なんでこいつはこんなやり方しかできないんだ…?
どうすれば自分が好きになれる…?
どうすれば一緒にデートできる…?
どうすればカッコいい男になる…?
とか、いろんなメッセージと自分の欲望を一方的に表していた。
「ブ、ブロックしたかったんですけど…。先輩の友達だから…、先輩の友達をブロックしたら柊先輩に嫌がられるかもしれない…」
「……いや、この件については加藤を話してみる。そして嫌だったらブロックしてもいいよ。それは自分で決めること、俺はそんなことで雨宮を嫌がったりしない」
「うん…。やっぱり柊くん好き…!」
「君付け…」
「ダメ?」
「ため口…」
「ダメ…?」
首を傾げてこっちを見つめる雨宮にそれっぽい話が出てこなかった。別に嫌じゃなかったからかな…、雨宮にだけ、その言い方でもいいって許してしまう。いつも俺に従うし、いい子だから雨宮に似合ういい男子と付き合ってほしかった。親かよ…俺。
しかも、お花見に行ったあの日にL○NEまで交換したんだ。すぐ隣に住んでる俺もまだ交換してないのに、まぁ…俺はL○NEなんかこだわってないから仕方がないよな。今までずっと家に来て話をかけてるから、まだ不便じゃなかった。
「森岡のことは気にしないで…、俺と加藤が話してみるからね?」
「うん!柊くん、優しい!」
「先輩だろう…?」
「柊くん先輩!」
「……分かった。分かった!好きにしろ…!」
「へへへ…、そして!」
「うん?」
俺に自分をスマホを見せる雨宮、そこにはL○NEを交換するためのコードが映し出されていた。もしかして、雨宮…俺とL○NEがしたいってわけ?恥ずかしいけど、俺のL○NE友達…、家族を除いて5人くらいかな…。あんまり連絡しないから…。
「L○NEしよう!いつも隣に行ってノックするのはめんどくさいからね?」
「かもな…。いいよ」
「わぁー!やった!柊くんとL○NE!」
こんなことで喜ぶ女の子はこの世に雨宮しかいないと思う。
「L○NEにはちゃんと名前を…」
プロフィール『柊くん先輩』。
「お前…、雨宮!」
「え…、全部好きだからこう書いておきます…」
「なんか、疲れた…。戻ろう」
「はい!」
階段を降りる時、俺はスマホばかり見ている雨宮に声をかけた。
「雨宮さ、二人きりの時はどうでもいいけど…。みんなの前ではちゃんと敬語で話した方がいいよ」
「うん!」
「分かった?」
「うん!」
「本当に?」
「うん!!」
「聞いてないんでしょう?」
「うん!」
こんな後輩と真面目に話をしようとした俺が愚かな人間でした…。
そんなに嬉しいのか、ただ俺とL○NEを交換しただけじゃん…。大したことでもないのに彼女はすごく喜んでいた。俺もなんでもないことに喜んだことあったっけ…?多分、ないと思うからそれができる雨宮がちょっと羨ましかった。
つい彼女の横顔を見て微笑んでしまう。
「じゃあ!柊くん!バイバイ、後でお昼一緒に食べよう!」
「食べないから友達と食べろ!」
「うん!約束したよ!」
「……」
俺の日本語がおかしいのか、雨宮の理解力が足りないのか分からなくなってきた。
それから教室に戻ってきて加藤と話をしたかったけど、どっかに行っちゃった加藤はしばらく席を外していた。何一つ上手く行けないな…。
「柊!」
席に座って加藤にL○NEを送っていたら、教室に入る森岡が俺を呼ぶ。
「あ、森岡か…」
つい先のL○NEを思い出してしまった俺は、森岡に話をかけるのが苦手になってしまう。ちょっと引く…。今まで森岡がどんなやり方で人間関係を築き上げたのか、それがよく分からなかったから先のことで俺は失望してしまった。今までそんなやり方で…、やってきたから誰もお前のそばに残らないんだよ…。
「あのさ、好きな女の子にL○NEを送って返事が来なかったら…。柊はどうする?」
「返事が来るまで待つ。それ以外にできることないだろう…?」
「でも、どうしても返事してほしいなら…?」
「それでも待つ。お前は女性のことを何も知らないからな…」
もちろん、そう言っている俺もそんなこと知らない。
「え…」
「しつこい男はモテないぞ」
「……はあ、加藤のやつはどこに行ったんだ」
「加藤?」
「そう。加藤ならなんか…、みんなで遊ぶチャンスを作ってくれないかなーと思ってさ」
そして俺のスマホに加藤からのL○NEが届いた。
海「屋上に来ない?」
これだけ…?もうすぐお昼ってことは分かるけど、その前に授業だぞ…?
でも、加藤に何かあったかもしれないから一応俺もサボることにした。
「俺、ちょっと行ってくる」
「茜ちゃんに?」
「違う、加藤だ」
「そっか…」
「そして、一つだけ教えてあげる。諦める時を知らない人は同じ間違いを繰り返す」
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