第3話

 冷たい月に冷たい夜だった。

 深夜の4時。

 もうすぐ、学校から帰ることができる。

 誰もが寝静まっているはず。

 そんな学校で、私は最後の学校を卒業するために、西野君との関係、家庭の不和、色々と決着をつけなければならないのではないだろうか?


「なあ、そんなに辛い顔するなよ。良いものって最後にある場合が多いんだ。残りものっていうのは、使い道が一つしかないからなんだと思う」

「私は最後の学校へ来たのは、社会を諦めるためではないわ。だって、社会へでるための最後の手段なのだから」

 西野君は笑った。

「なんだ。答えを知っているんじゃないか」


 いきなり私は西野君に平手打ちをした。

「きっと、好きな人がいたわけじゃない。元々私のこと好きだったんでしょ」

 西野君は打たれた左頬に手を当て、微笑みながら頷いた。

 

 勇気がないのは、私だけだと思っていた。

 でも、最後の勇気を彼は全部出し切って。

 この深夜学校へと私を追って来たのだ。


 ここは、最後の学校でもあり、始まりの学校でもあった。


 寝ぼけ眼の先生たちは、そんな私たちに最後のチャンスと晴れ舞台を用意する。

 一番良いことは、最後に残るんだ。

 そう先生たちが言っていた。


 西野君も私も、この深夜学校で新しい社会へと旅立つのだろう。

 もう迷うことはない。

 だって、残ったものには使い道はそんなに多くはないはずだ……。

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深夜学校 主道 学 @etoo

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