2023年
1月
1/1~1/10
1日
明けましておめでとう御座います。なんて丁寧に頭を下げて。いつもこんな敬語なんて使わないくせに、笑っちゃうね。
去年も色んなことがあった。今年はどんな年になるかな、なんて、分からないことを考えても仕方ないか。
とにかく今年も、私の横に、貴方がいてくれたら。私は間違いなく大吉なんだよ。
「御神籤を引かなくとも」
2日
ひたすらに走る君の後ろ姿に、私は密かに憧れていた。君はこの学年の中で、一番足が遅かった。それでも君は走るのが大好きだから、走り続けた。
だから私、思わず手を貸しちゃった。走るフォーム、基礎体力づくり、何でもサポートした。君にもっと心地良く、走ってほしくて。
さあ、ピストルが鳴るよ。
「走れ!!」
3日
「かっこ良く走る君が、好きです」
ある時、そんな風に告白された。テレビに出た影響かもしれない。参ったなぁ、なんて後頭部を掻く。こういった状況には、生憎慣れていないのだ。
……答えは決まっているのだけれど。
僕は、かっこ良くじゃなくて、一生懸命、って言ってくれた、あの子が好きだから。
「一生懸命、走ります」
4日
早く寝なさいと、今日も貴方に注意される。でも私にだって理由があるんだ。それは、貴方が起きているから。こんな暗くて、寂しい夜に、一人ぼっちだなんて、可哀想だから。
私がいたら、少しだけ貴方にとっての明かりになるかもしれないでしょう?
そんなことを考えながら、今日も少しだけ早く寝るの。
「夜ふかしのワケ」
5日
別にこの世からいなくなりたいわけじゃない。ただ今日は、ちょっと何もかも放り出したい日だった。
そうなって初めて気づく。意外と周りには「未来の約束」が多いことに。
来週、欲しい漫画の発売日。この授業の単位が取れたらデートなの。一緒にゲームをする約束が。
未来はきっと、ちょっと明るい。
「未来の話」
6日
腕を上げたんじゃない?憧れの先輩にそんな風に肩を叩かれた時、私は嬉しくて、それだけで胸がいっぱいになった。
先輩の背中をいつも追いかけた。脇目も振らず、美しく淡々と仕事をこなす先輩の姿に、あのようになりたいと思い。
私は重い返り血を振り払い、血溜まりの道を爽やかに蹴って駆け出した。
「殺し屋の先輩」
7日
100日後に何とかかんとか……っていうやつあるだろ?俺、ああいうの見ると、何ですぐじゃないんだろうって思うんだよな。100日後の結果は分かりきってるのに、何が面白いんだって思うんだよなぁ……。
……え?これは「140字後に黙る男」……?おいおい、待ってくれ、俺のことか?何なんだよ!!考え直
「140字後に黙る男」
8日
この悲しみが、歌になる。まず気持ちが言葉になって、それをメロディーに乗せて、涙混じりに歌えば、私の悲しみは商品になる。
「共感した」とか、「自然と涙が」なんて言ってもらえれば、私の勝ちなんだ。きっとこの悲しみも、少しは報われるのだろう。
でも、何だろう、何だかな。ははっ、虚しいや。
「感情は消耗品」
9日
いつもなら考えないような晴れ着に身を包み、微笑む君が、とても綺麗で。僕の思いが数年前のあの頃に戻る。あの時の君は、こんな綺麗じゃなかった。ただ明るくて、そんな君が、大好きで。
君も昔のままじゃない。きっと綺麗な君は他の誰かのもの。僕は自分に言い聞かせる。
「君はすごく、変わったね」
「昔と変わった君」
10日
目の前に他の人の言葉が流れる度、私の言葉が消えていく気がした。
ここでは誰もが叫んでいる。自分はここにいて、こんなことを思っているのだと叫んでいる。とても醜くて、それでも私はすごいと思うし、尊敬する。
私も叫びたい。でも、誰かと同じようなことを言ってる気がする。そう思い、沈黙した。
「沈黙する個人」
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