1/11〜1/20

11日


どうか笑って。君の笑顔が好きだから。その黒い瞳が見えなくなるくらいが丁度いい。涙でぼやけて、私の姿も消してしまって。そう願うのに。君は笑ってくれない。ああでも、涙は流している。きっと君から私は見えない。それでいい。私のことを君から消して。

惨めな私を、どうか君の世界から追放して。


「惨めな私を笑って」




12日


探してた。ずっと君を探してた。出会った瞬間、自然とそんなことを思った。きっと私は、貴方に出会うために生まれてきたんだ。そんなことを真顔で言ってしまうくらいには。

おかしな人、と君は笑う。それでも君もそう思ってくれていることを、私は知っている。

おかしい者同士、仲良くしようよ。ねぇ?


「おかしな2人」




13日


何を言おう、と逡巡してもう2時間。君とのトーク画面の前で、私は唸っている。もう私が君からのメッセージを見たことは、バレているのだろう。でもごめんね、君に言いたいことは沢山あるんだけど、何を言えばいいか分からないんだ。

君相手だと、何を言えば無難になるのか、分からなくなっちゃうんだ。


「無難な返信」




14日


緊張で手が震える。やはりこういう状態は慣れない。落ち着くために深呼吸。でもシャープペンシルを握る手が、震えてる。

「大丈夫」

すると、後ろから声が聞こえた。

「今日まで頑張ってきた。だから、大丈夫」

他の受験生の、自分に向けた言葉らしい。でも僕に言われた気がして、自然と背筋が伸びた。


「自分に激励」




15日


緊張する。そんなことを思いながら、リュックサックに付けたお守りに思いを馳せて。私はガタガタ震えている。だから。

「大丈夫」

そう呟く。

「今日まで頑張ってきた。だから、大丈夫」

……それでもやはり、緊張する。

しかし、ふと顔を上げると、前の人の背筋が伸びていた。私も、この人のように。


「どうか背筋を伸ばして」




16日


甘い蜜がほしいのです。くらっくらと思考を惑わせて、視界を歪ますような、そんな甘い蜜がほしいのです。

貴方がくれるのだと、私は知っています。とてもよく、知っています。何故なら私は、貴方を一目見た瞬間から、まさしくそのような感覚に陥ってしまったのですから。

くださいな、貴方の甘い蜜を。


「甘い蜜を求めて」




17日


すみません。突然暗がりから声をかけられた。声をかけてきた人のことはよく見えない。でも美人だと、僕の直感が告げる。

道を聞きたいと言う人影の告げた行き先は、とある民家だった。指で方向を示しつつ、口頭で説明する。ありがとうございます、という言葉に振り返ると、その人影はもういなかった。


「きっと白昼夢」




18日


貴方はまるで魔女ね、なんて言われたから、僕は男だから、魔男だよ、なんて返した。あらそうね、と笑う君。大きな口に、真っ赤なリップ。きっと君は古から伝わる魔女だ。

僕は君を虜にできるような魔法はない。君の四肢を目で追うことしかできない。とても言葉になんて出来ないから、魔男になりたい。


「魔男」




19日


風邪で寝込む君に、栄養のあるものを作ってやる。張り切って作ったら、これ、病人に食べきれるのだろうか?なんて量が出来上がってしまった。まあいい。余ったら俺が食おう。

身体を起こして、たどたどしくも食べる君。美味しい、と言って笑う、その赤くなった顔に、かわいいという言葉は飲み込んだ。


「看病」




20日


気づくと知らないところにいた。豊かな自然、悠々と飛び回るドラゴン。……ドラゴン?まさかここは……異世界!?驚いたのも束の間、ドラゴンのガラスの様な瞳が俺を捉える。ヤバい、食べられる!そう思ったとき、誰かが俺の前に立ち塞がった。見ると、綺麗な女の子。彼女は口を開き。

「撮影中です」


「ドラマ乱入」

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