12/21〜12/31
21日
愛してるを伝えても、貴方は「ああ」とか「うん」とか言うだけで、同じ言葉を返してくれない。それでも頭を撫でてくれたり、体調が悪い時は看病してくれたり、貴方からの愛は伝わる。
それでも、同じ言葉を返してほしい、だなんて……。
ああ、でも、もし言われても、聞き慣れなくて卒倒しちゃいそう。
「同じ言葉を返してよ」
22日
またねと手を振って、「また」などあるのかと考える。貴方はまた私と会いたいと考えてくれるだろうか。そして私は、また貴方と会いたいと考えるだろうか。踵を返し、歩き出し、何故か無性に泣きたくなりながら、空を見上げる。
今生の別れなんかじゃない。きっとまた、縁があれば。その日まで、また。
「別れの日」
23日
私に似合う本を仕立ててください。そんな注文を受け、私は早速制作に取り掛かった。
まずは内容。どこか不思議なものであると良い。次に装丁。開くだけで楽しい悪戯心も取り入れよう。最後にデザイン。ここが悪ければ、どんなに内容や装丁を良くしても意味がない。
さて完成。今回も自信作だ。どうぞ。
「貴方のための本作り」
24日
寒いことを口実にして、手を繋いでもいいだろうか。抱き着いてもいいだろうか。そんなに頻繁に会えないから、たまに会うときくらい、そんなワガママなお願いをしたって、いいだろうか。
今日も行く宛の無い君への言葉を、スマホのメモ帳の下書きにしたためるよ。次に会う時には、しっかり渡せるかな。
「思いを馳せる寒い日のこと」
25日
街ゆくカップルを横目に、マスクの中でこっそり舌打ち。所構わずいちゃいちゃしやがって。これは負け犬の遠吠えに過ぎないことも、分かっているのだけれど。
ため息を吐いて、スマホを取り出し。イルミネーションの写真と共に貴方にメッセージを送る。
遠距離で会えないけど、今日も貴方が大好きだよ。
「遠くから送る光」
26日
あわてんぼうのサンタクロース。煙突覗いて〜♪
……なんて歌う子供が俺の横を通っていく。きゃははなんて笑って、その笑い声が俺を苛つかせた。くそっ、子供は気楽だな。俺の気も知らないで。
大きな白い袋を抱え、俺はクリスマスの終わった街を歩いていく。プレゼント配布のペース配分、間違えた。
「うっかりなサンタクロース」
27日
いつか貴方が言ったこと覚えてる?僕はその言葉を信じてしまって、ここまで来たよ。嬉しい事も、悲しい事も、全部二人で乗り越えてきたね。
でも貴方は忘れてしまっているみたいだから、今度は僕から言うよ。
この世界がどんなに醜く汚いものだとしても。僕と貴方とで生きていく。そう決まってるんだ。
「運命」
28日
怠い体に鞭を打って、私はなんとか家に帰る。……本当は苦痛なんだ。過度な心配をされたり、甘やかされるのが、どこか煩わしくて。
でも自分を大事にしてくれてる人がいること、温かなお風呂が沸いていて、寂しかったら話し相手がいる。それの何と幸せなことか。
今日の夕飯は、凄く辛いカレーですよ。
「帰省すれば」
29日
もちもち、むにょーん。
大きなもちもちの頬に必死に、同じく大きなもちもちな餅を詰め込んでいる自分の子供に、思わず微笑んでしまう。
喉に詰まらせないようにね。そう注意はしても、焦っていっぱい食べてしまう。気持ちは、わかるよ。でもほら、水を飲んで。私も食べよう。
もちもち、むにょーん。
「柔らかな」
30日
「おはようございます」。そう言うと無言でいいねが付いて、まるでおはようございます、と返された気分だ。皆の調子はどう?とか、俺は今こんな感じ、なんて言いたいけど、ちょっと野暮ったいかな。この世界に、薄い板の向こう側に誰かがいて、俺の挨拶に答えてくれる。それが擽ったくて、気持ちいい。
「朝の挨拶」
31日
今年も終わる日になった。別に、0時を越えたら明日になるだけで、いつもと違いなんてあるわけではないんだけれど。それでも何かが違うんだ。何かが変わってしまうんだ。そんなことを思いながら鐘の音を聞いて、私は、今日までの自分を思い出すんだ。
1秒後には来年。その1秒で、今年を振り返っていく。
「1秒間の自省」
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