12/11~12/20
11日
怒ってる?と聞くと、怒ってないよ。と君は笑って返した。君は私がどんなことをしても、笑って許してくれる。そんな優しい人だった。だから私は申し訳なくなる。私はいつも、君を汚してしまう。
君がまた人を殺した。その度僕はその処理をする。大丈夫、僕に任せて。
……何も起こってなんかないよ。
「おこってないよ」
12日
「もっと上手くなったら」
「それまで待ってて」
小説家になるという夢を、笑わずに応援してくれた君。私はそんな言い訳を並べて、君にずっと長くかけて書いた力作を見せなかったことを、後悔している。
君のお墓の前、ようやく涙混じりの声で言う。
「下手だと思うけど、どうかこれを読んでください」
「君に送る力作」
13日
僕と君は運命の出会いを果たした。あの雨の日、コンビニで僕たちは出会ったね。あの日君は、僕の手を強く握って、離さないでいてくれた。僕と君は、相思相愛なんだ。
そのはずなのに、どうして?どうして僕をこんなゴミ捨て場に捨てるの?僕はまだ若いのに。何で。
空を見る。せめて今雨が降ればなぁ。
「ビニール傘の思い」
14日
体に穴を開けるなんて、昔だったら全く考えられないことだった。でも君の耳に光る宝石が眩しくて。私も君と同じものが欲しくて、思い切って開けてしまった。
君がいなくなった後も、私は体に穴を開け続けた。この穴だらけの体を見るたび、君のことを思い出すよ。
だから誰か、この穴を埋めてください。
「君で開いた穴は」
15日
世の中上手くいくことばかりではなくて。思い通りにいくことばかりではなくて。いつも誰かに助けられてばかりで。私がこの世界にいる意味なんてあるのかな、なんて、そんなことを思ってる。貴方は決まって、いてくれるだけでいいよなんて言うけれど。それじゃあ駄目なの。
貴方の荷物になりたくない。
「私は荷物」
16日
私の好きな作家の、盗作疑惑が浮上した。初めは噂だったが、徐々にそれは信憑性が増していき、その作家は筆を折ることを強いられた。
彼は私の好きなジャンルばかりを書く人だった。だからとても悲しくて、私は筆を取った。
貴方の書いた作品の登場人物、世界観、設定を少し変えて、物語を書き始める。
「盗作の盗作」
17日
貴方の映る写真を前に、私は泣く。写真の中の貴方はこんなにも幸せそうで、私の胸の底から、悲しみが込み上げてくる。
私も貴方を、こんな表情にさせたかった。あの時、貴方の手を掴んでいれば、こんなことにならなかった。
貴方は、私の大好きな幼馴染は、配偶者からの過剰な暴力を受け、亡くなった。
「あの時貴方を連れ去れれば」
18日
いつも私は嫉妬している。通りすがりの美しい人に。いつも成績トップのガリ勉に。私だって頑張っているのに、センスという才能で全て掻っ攫っていく同期。私に全然構ってくれない恋人。
私は何をしたって誰かに負ける。あーあ、つまんないな、こんな人生。努力したって無駄みたいだ。私は目を閉じた。
「惰性の嫉妬」
19日
多数決をすることになった。そうしなければ、いつまで経っても決まらなそうだからだ。
正直嫌な予感はしていた。多数決をする前に、皆の視線が私に向いていたから。
「多数決の結果……」
ほうら、やっぱり。私がやると決まってしまった。
こうして私はいつも通り、数の暴力に意見を封殺されてしまう。
「多数決」
20日
思い出を残すのが好き。ちょっと気取って、「Say cheese」。貴方はいつも恥ずかしげに笑いながら、カメラに収まってくれる。
撮った写真は、二人のアルバムに。綺麗に並べてデコレーションして、後から見返す。……つもりだったけど。
どうしよう、貴方のことが好きすぎて、薄目じゃないと見返せない。
「いつか直視出来るかな」
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