10/21~10/31

21日


私の隣の家お姉さんは、とても美しい人だった。

毎日白い花を愛でる横顔が綺麗で、私は登校をする度にその横顔を見ては、将来あんな人になれたらな、と思うばかりだった。

ある日お姉さんに、良ければお茶でもどう?と鈴の鳴るような声でお誘いを受けた。私は嬉しくなり、満面の笑みでそれを承諾した。


「鈴蘭」

21.近所




22日


貴方の口から流れる言葉が好き。それは貴方特有のリズムに乗って、耳に心地良く、私の中で響くの。

そこに季節の音も混ざる。例えば、虫の鳴き声。季節の香りも混ざる。例えば、咲き誇った花の香り。季節の色も混ざる。例えば、雪の白さ。

その全てを、貴方が詩にして届けてくれる。私に季節を教える。


「四季折々」

22.風物詩




23日


ここは色の舞う場所。

沢山の人がいて、誰一人同じ人はいない。その人だけのもつ色が、すれ違って、時に絡み合って、最後にはサヨナラを告げるの。

ここは黒だって仲間外れにはならないわ。どんな色の人も受け入れてくれる。

だから私も自分らしく、立って、舞って。

ああここは、とても綺麗な場所ね。


「色彩豊か」

23.原宿




24日


貴方みたいになりたくて、貴方のマネをする。でも外だと貴方にバレてしまうから、家の中でこっそり。それでも誰かに見て欲しくなるから、顔はバレないように写真を撮って、SNSに投稿するのが日課。

するとある日「〇〇だよね?」とコメントが。否定する間もなく、私でなくあの子の情報が出回り始めた。


「なりすまし」

24.コスプレ




25日


いつも私の何気ない投稿に反応をくれる貴方。誰もがスルーする私の投稿に反応をくれる貴方。私はそんな貴方のことが気になっている。

私は特別投稿内容が面白いわけでもないし、至って平々凡々。なのに貴方がいるから投稿をやめられない。

やがて反応数が増えてもやはり同じ。気になるのは貴方の反応。


「Please give me your reaction」

25.SNS




26日


もういくつ寝ると〜……。

……あれ、何だっけ、進級だっけ?夏休みだっけ?ハロウィンだっけ?それともクリスマス?もしかして、誕生日?

んー、全部違う気がするなぁ。なんかこう、喉まで出かかってるんだけどさぁ。

まっ、正解じゃなくていいか。ここからはオリジナルで。

もういくつ寝ると〜……♪


「もういくつ寝ると」

26.楽しみ




27日


誰もが私を待ち侘びます。

誰もが私を疎みます。

私は気まぐれに、足音を踏み鳴らして彼らに近づきます。

時には早く来てくれと言われ、時にはまだ来ないで、と言われます。

ですが、私には知ったこっちゃありません。ただ私の思うようにゆくだけなのです。

さて今年も、新たな私がやって来ましたよ。


「マイペース」

27.季節




28日


何やら私の子供がソワソワしている。一方私は、それに気づかないフリ。そこで、どうしたの?なんて言ったら、何でもない!と言われるだろうから。だからここは我慢。

やがて我が子がトコトコ歩いてくる。そして背中に隠していた何かを私に取り出す。それはぬいぐるみ。その唇を、私の頬に押し当てた。


「親への愛情」

28.悪戯




29日


料理作りなんて、まともにしたことがない。だから頑張って作り始める。指を切ったり、火傷をしたり、涙目になりながら、それでも、美味しいと言ってほしいから。

完成!と、試作品を一つ食べる。美味しい!すごい!私、こんなものが作れるんだ!次々に摘んでいって。

……あ。あの人にあげる分が……。


「作り直し」

29.お菓子




30日


「君もジャック・オー・ランタンにならない?」

野菜の被り物をした陽気な男がそう声をかけてきた。……仮装の呼びかけかな。男の手の中の同じ被り物を見つめる。

お金はいらないらしい。それなら、と一つもらった。そして被る。

……これ私にぴったりだ。でもちょっと息苦しい。……あれ、抜けない。


「仲間にならない?」

30.カボチャ




31日


今日は素敵な日だ。魔女が気を利かせて、一日中夜にしてくれているらしい。空には星が瞬いて、コウモリも魔女もドラキュラも飛び、街は楽しげな声で溢れ返っている。

今日は"フツウ"じゃなくても許される日。人間もゾンビも狼男も皆おいで!一緒に狂ったパーティーをしよう。ああ、とっても楽しいね!


「"フツウ"は存在しない」

31.ハロウィン

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