10/11~10/20
11日
これは武器よ、と母親に昔から教えられてきた。
こうして身に纏えば、鎧になる。更に人の目を惹けるから、武器にもなるの。きっと貴方のことを強くしてくれるわ。もし勇気を出したいときは、これをするのよ。
だから、武装した。この勝負に勝つために。最高に自分を"魅せる"。
ほら、かかって来いよ。
「いざ、勝負」
11.化粧
12日
俺たち、友達だろ、と、彼が泣きついてくる。しかし俺はそれを泣く泣く振り払った。
確かに、俺たちは友人だ。親友と言ってもいいと思う。だが、この場は仕方がない。こいつじゃ駄目だ。俺が行かなければ。
雑魚は下がってろ、と彼を見ぬまま怒鳴りつける。
この戦地に出向くのは、俺だけでいいんだ。
「俺が行く」
12.仲間
13日
「あの方は、この村を守ってくださっているんだ」
昔から何度も、色んな大人にそう聞かされてきた。なんでも、ここは災害が多い村で。しかし彼が生まれてからは、そういうことが一切起こらなくなってそうだ。
この村に囚われ、歳を取らなくなった人間。
可哀想だと思うけど、僕には何も出来なかった。
「村の言い習わし」
13.災い
14日
あの人は烏滸がましい。ああ、なんて愚かなんだろう。自分勝手に笑って、それで僕のことを目一杯、引き上げてしまって。僕はそんなこと、一切頼んでいないというのに。
それで貴方が大怪我を負って。ハッ、ザマァないね。だから僕は言ったんだ。僕に関わるとロクなことがないと。
……ねぇ、起きてよ。
「守られる側」
14.守る
15日
君に出会いたくない。会うことを考えるだけで、心臓の鼓動が早くなる。汗が出て止まらない。
だから住む場所を変える。容姿も変える。喋り方も。記憶も改ざんしたかったけれど、無理だった。
ここまでやったのに、やはり君に出会ってしまう。駄目だよ、何回も恋に落ちて、死に別れる運命なんだから。
「悲惨な運命」
15.遭遇
16日
「ほら、乗りな」
貴方がそう言って、私にヘルメットを投げる。なんとか受け取ったけど、受け取った拍子に手がジンジン痛んだ。
貴方が笑って自分の後ろを指差す。私はヘルメットを被りながら彼の後ろに乗り、彼の腰に腕を回した。
走り出すバイク。スピードは出ない。
安全運転第一にな、と彼は笑う。
「安全運転でどこまでも」
16.カブ
17日
手放せない、手放したくない。これは僕のものだ。誰にも渡したくない。
触れ過ぎたら熱くて火傷してしまう。かといって手を離したら、きっと凍えてしまう。これはそういうモノ。扱うのが難しい。
ああ、でも貴方のくれたもので火傷が出来るなら、それもいいだろうか。
その灯を、ぎゅっと抱き締めて。
「貴方のくれたやさしさ」
17.ランタン
18日
その日、少女は女になった。怪我をした訳でもないのに血を流し、体はどんどんふくよかさを増すばかり。ああ気持ち悪い。どうしてこんなことが自分に起こるのかと、かつて少女だった女は混乱した。
心優しかった少女は、その日から冷たい女となった。禁忌にも手を出すようになり、少女に戻ろうとした。
「大人になる」
18.魔女
19日
そりゃ、大きな結果も、派手な成果が得られることはない。地味で疲れる作業。もちろん機械を取り入れて効率化を図ることも出来る。が、私はそうするつもりはなかった。
作業を終えた後に飲む酒が旨い。お風呂が気持ちいい。
何よりしっかり世話して、時期が来たら、私に綺麗な景色を見せてくれるから。
「努力は実を結ぶ」
19.農民
20日
「私は昔、貴方に助けてもらいました。今日はその恩返しに……。私が出来ることなら何でもします。なので、欲しい物やしてほしいことがあったら、何でも言ってください!貴方の役に立ちたいんです!」
「そうか、じゃあ帰ってくれ」
「無理です。恩返しが出来ません」
「何でもって言ったじゃん……」
「何でも」
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