10月 ハロウィンノベルパーティ2022参加作品(10/1~10/31)

10/1~10/10

1日(※2本あります!)


君に初めて会ったとき、何故だか「懐かしい」と思ったの。それに、好きなものも嫌いなものもお気に入りの場所も全部一緒。仲良くなってから、「君に会うのは初めてじゃない気がしたの」と言ったら、「僕もだよ」と君は笑ってくれた。

それからもっとしばらくして、君が整形したストーカーと気づいた。


「デジャヴ」




「はじめのいーっぽ」

そんな掛け声を出して、私たちは自分たちで決めた線から全力で飛ぶ。私の方が遠くまで飛べた、と近くにいた君に声を掛けた。君は友達の友達、知らない子だった。私より飛べなくて、悔しそうな表情。それが私の見た君の初めての表情だった。

そしてこれが私と君の馴れ初めだった。


「はじめのいっぽ」

1.最初




2日


夕方から次の日の朝まで。馬鹿みたいに長く話を重ねる。こんなに話しても、全く飽きない。ふわふわとした多幸感と、高揚感が私を包み込んでいる。それはまるで、永遠に終わらない宴のようだった。本当にそうしてしまいたかった。

この時間に永遠に身を委ねていたい。終わらないでほしい。願い続ける。


「徹夜の宴」

2.祭り




3日


今年も実りの多い季節となりましたね。そちらの作物も食べ頃になってきましたか?

私もまた、食べ頃がやって来ましたよ。貴方は全く受け取ってはくれませんが。

作物は、貴方の手によって蹂躙され、摘み取られる。貴方の手によって終わるなら、作物も幸せでしょう。

私にもそうしてくれたらいいのに。


「摘み取る」

3.収穫




4日


ここは、どれだけ騒がしくしても全く怒られない、そんな部屋だった。

大声でカラオケ大会、クラッカーだって鳴らしまくった。大声で笑って、大声で泣いて。君と二人で、騒がしい夜を越した。

それでも誰にも怒られない。

その寂しさを振り切るように、世界に取り残された二人の私たちはとにかく騒ぐ。


「世界にたった二人」

4.パーティー




5日


今日は何になってもいい日。本当は無難に魔法使いの格好をしようと思っていた。

それでも君が「どうせ生涯結婚なんて出来ないんだから、新郎の格好する」なんて言うから。

純白のドレスに、べールを被って。ガタイのいいお前に似合わないと笑われたけど、いいんだ。

男の俺も、君の花嫁になれるなら。


「結婚式ごっこ」

5.仮装




6日


「本当」なんて見せる気はなかった。

裏の顔なんて、見せたところで何のメリットもない。

誰でも、少し優しくすれば、向こうから尽くしてくれるようになる。少しお願いすれば、勝手に何でもしてくれる。それで楽だった。

でも貴方には通用しなかった。むしろ、本当の顔を見せた方が喜ばれた。変な奴!


「変な奴」

6.仮面




7日


ぱちぱち、ぱちぱち。

眼下で何かが小さく爆ぜている。でも眠りに落ちかけている私には、その正体が上手く掴めなかった。

おかしいな、さっきまで全然眠くもなかった。夜もこれからなはずだったのに。どうしてこんなに……。

誰かが私の肩に手を置く。そして囁くの。

「お休みなさい。永遠に良い夢を」


「bad night」

7.焚火




8日


昔から続くおまじない。

ママのママ、そのまたママの、ママのママ……もう口が追い付かないくらい、ずーっと昔からのおまじない。

もし好きな人に気持ちを伝えたいなら、勇気が出るように、こんなおまじない!

簡単だよ、告白する前に、自分の思う、最高の笑顔を作ること!

きっとこれで、大丈夫だね!


「勇気の出るおまじない」

8.先祖




9日


彼女には悪しき魂が取り憑いているんだ。誰が何と言おうとそうなのだ。

だから火で炙り、その正体を曝け出そうと思ったのだ。そうすれば本来の彼女は救われる。また以前のように、お淑やかに優雅に笑ってくれる。そのはずなんだ。

でも何故か悪しき魂に犯された彼女の方が、生き生きしている気がする。


「魔女狩り」

9.悪霊




10日


私は昔から物を大事にする性格だ。

鉛筆は小指の第一関節くらいになるまで使うし、消しゴムも本当に小さくなるまで使う。ノートに余白は残さない。場合によってはケチだと言われるかもしれないが、私は大事にしているだけだ。

そして捨てる時は「ありがとう」と必ず告げる。物にも魂があると思うから。


「アニミズム」

10.精霊

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