6月

6/1〜6/10

1日


課題が終わらない。

あーどうしよう。全然進まない。落ち着け。確認しよう。課題の締切は明日の12時ぴったり。今の進捗状況。ノルマ10万字以上に対し、今は約3万字。

落ち着け……深呼吸をしろ……そうだ。落ち着こう。そうしたらきっと書く文が浮かぶはずだ。大丈夫、まだ時間はある!おやすみ!


「締切間近の小説家」




2日


晴れ渡った空を前に、私は大きく伸びをする。夏の晴れ間というのは、日差しが心地いい。しかし油断は禁物。あの遠くの入道雲を見て?きっともうすぐ雨が降る。あれに当たる前に、早く帰らないと。

その時、スマホが震える。上司からだった。

「まだ会社の前にいるか?すまん、急ぎのがあってな……」


「雨予報」




3日


寝っ転がって、目を閉じる。

その時、ふと考えてしまった。明日は朝早く起きなきゃ、明日の仕事はこれで、寝不足だと体調を崩す、早く寝なきゃ……。

その瞬間、今日は中々眠れない日だと気づいてしまった。どうしよう。不安だ。

私は足元の毛布を引き寄せ、かける。

暑い、けど、安心した。


「抱擁」




4日


「えー、今のはカラオケ行く流れだったでしょ!」

「空気読めなすぎー」

「てか自分勝手すぎw」

「明日からあんたのことハブるからw」


「私が空気読めないってだけでハブるんだ?そこに行きたいっていうのは、あんたらの事情で私の事情じゃない。……"自分勝手"に、カラオケでもどこへでも行きなよ」


「自分勝手」




5日


暑い。本当に暑い。帽子があって良かった。でなければ私は熱中症で倒れていただろう。晴れているのは好きだ。雨も嫌いじゃないけど、傘を差すのが面倒だから。だったら、晴れてる方が好き。

空を見上げると、真っ青な空。真っ白な雲。誰にも関心のない太陽。

スマホを構えて、一枚。写真技術は無い。


「快晴」




6日


忘れられない夏がある。

あの一夏の冒険を。耐え難い悲劇を。それでも仲間たちと乗り越えた瞬間を。笑い合ったいつもの場所を。

帰りにコンビニに寄って、安いアイスを買って、いつもの場所に着く頃にはかなり溶けていて、ベトベトで、馬鹿騒ぎをした、あの何でもない一瞬を。

思い出しては、笑う。


「忘れない」




7日


貴方の浮気が発覚した。あんなに私に好きだと言ってきたくせに。その愛の言葉を、他の人にも使っていたんだね。

でもね、そんなことはどうだっていいんだ。大事なのは今後。そんな馬鹿に構うほど、私は暇じゃない。

選別に、香水を贈ってやった。私って、すっごく優しいでしょ?


「スノードロップ」




8日


前略。あの名作の続きを書くことになった。

皆も一度はやったことがあるだろう。羅生門の続きを書くとか。まあ僕もそれをやることになったのだ。

だが紙を前に、何も浮かばない。するとその時、何かが降りてきたような気がした。比喩じゃない。降りてきたんだ。

「俺の作品の続きを書けるって!?」


「作者降臨」




9日


はじく、という感覚が好きなんだ。

ひく、のではない。はじくのだ。その時、音が跳ねて、はじけて、俺たちに"音楽"として届く。

耳にうるさい雑音も、メロディーになれば音楽となる。うるさいだけじゃない。ここにはメッセージがあるんだ。ああ、誰でもいいから、一人にだけでも、届きますように。


「エレキギター」




10日


人間っていうのは、縛られすぎだと思うのだ。

何をするにも、何を考えるにも、それは僕らに付き纏う。どこまで走ろうと、それから逃れることは出来ない。やつらは追いかけては来ない。追いかけては来ないが、ずっと隣にいるのだから。

本当に、うんざりしてしまう。僕は、机に腕時計を置いて出かけた。


「Time is money」

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