5/11〜5/20

11日


道を歩くと、唐突に開けたところがあった。どうやら建物が一つ潰れて、更地になってしまったらしい。

ここには何があったっけ。記憶を巡らすけど、覚えていない。

よく目を凝らすと、更地の真ん中に一輪花が咲いていた。それを見て、花の香りがここまで鼻を掠めるようで。

ああそうか。ここには……。


「連想、追憶」




12日


路傍に咲く花のような、そんな儚い恋をした。

わかっている。貴方にとって私は子供以外の何者でもなくて、私がこの気持ちを告げてしまったら、貴方は優しいから、きっと困ってしまうのでしょう。でも、そんなところが好きなんです。

これを恋なんて呼ばないから。

どうかお願い。ずっと幸せに生きて。


「叶わない願い事」




13日


「あんたって子は、いっつもそう!」

君はそうやってすぐ叫ぶ。

「こんなに家具を傷つけて散らかして!」

それはもう僕のサガだ。どうしても嫌なら、対策をしてくれ。

「そんなに悪さをするなら、あんたなんか捨てちゃうんだからね!」

脅しだと思うが、それは困る。

僕はようやくにゃあ、と鳴いた。


「爪研ぎは猫の仕事」




14日


聞こえますか。

聴こえますか。

私はとある星から今、このメッセージと音楽を送っています。届いていますでしょうか。

聞こえているのなら、どうか答えてください。貴方とお友達になりたいです。


「いいよ、友達になろう」

そう答えると、スマホの向こう側で嬉しいです、と声が聞こえた。


「未来のラジオ」




15日


僕は怒った。怒ったので、僕は武器を手に取った。もう許さない。絶対に許さない。お前だけは許さない。

ただ僕は、お前とは違う。お前と違って、暴力に頼ったりなんてしない。お前みたいな考え無しの馬鹿だと思うなよ。

僕は殴る。自分の気の向くまま、殴りまくって。

出来上がったのは、一本の小説。


「ペンは剣より」




16日


働く、ということはよくわからない。

人は水分と食物を摂取して、少しの運動をして、きちんとした睡眠を取れば生きていける、はず。

なのに、大人はわからない。生きるために働いて。でも仕事のせいで命を落とす人もいる。生きるために、それとも死ぬために、働いてるの?

大人になればわかるかな。


「十代の疑問」




17日


私はちょっと鈍臭い。何をするにもトロトロしていて、小学生の時なんか、皆が昼休み遊ぶ中、私だけまだ給食を食べていた。当然私はクラスメートから邪険にされて……。

だけど君はそんな私も受け入れてくれた。私のペースに合わせて、急がなくていいよと笑ってくれて。

君が好きだよ。でももう遅い。


「のろまな私」




18日


明るい声を出す。明るい表情を浮かべる。そうやって努めて、いつしか本当の感情がわからなくなった。人に笑顔を浮かべる自分が、どこか遠くに見えて、まるで自分じゃないみたい。

私は今、何を思っているのだろう。わからないから、笑うしかなくて。

心が血を流す。痛いと呟き、私は泣いた。


「素直」




19日


君が笑っているだけで良かったんだ。

でも君は大粒の涙を流して、傷ついてしまった。だったら君を傷つけたもの、全てを壊さなくちゃ。

例えそれが、世界という壮大なものであっても。

火を付ける。メラメラ燃えていく。すると君は、大きな悲鳴を上げた。

「何するの!それ私の好きな本!」

「え?」


「単純思考」




20日


窓から差し込む柔い光。その光に朝だよ、なんて言われて、言われるがまま、私は目を覚ます。ついで、早く起きろと言わんばかりにベルが鳴り響く。それは鬱陶しかったので、すぐに消した。

起き上がって、窓辺まで歩く。床が裸足に冷たい。思わず小さく笑いながら、私は大きく伸びをするのだ。


「早朝」

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