4/21〜4/30

21日


「貴方さえいれば、何もいらない」

それが君の常套句。何をするにも、君は僕と行動を共にする。

だけど僕は、それをやめてしまいたいんだ。いつまでも僕にベッタリはやめてほしい。知ってるよ?君のことが好きって言う人がいる。

だから、死んだ僕のことなんて忘れてよ。ね?


「君の幸せを願っています」




22日


今日の私は、とってもキマっている。

可愛い服を着ているし、どれだけ練習しても慣れないメイクだって上手くいった。今日のバスの運転手は愛想がいいし、おまけに今日は体調も悪くない。

こんな日に君に出会えたら。

なんて思っていたら、電車でばったり。ああ、今日って最高!


「Good day」




23日


本が好きだ。ページをめくる時の、あの指に触れる紙の触感。紙の中で踊る活字。1ページ1ページ、丁寧に文字を追っていって、その世界に溺れていく。その感覚が好きだ。

本当は、本なんて好きじゃなかった。活字を見ると眠くなってしまう。それでもあの日、君が図書室で嬉しそうに本を読むから。


「広がる世界」




24日


微睡みの中にいる。暖かな太陽の光。頬を優しく撫でる風。恐らくカーテンが揺れているのだろう、閉じた瞼の裏、影が揺れるのがまた心地いい。

極めつけは、心地いい声だ。貴方の声はとても優しいから、貴方の声を聞くとすぐ眠ってしまう。とても素敵な声なんだ。

まあ怒られるまで、このままゆっくり。


「5時間目」




25日


どうか笑わないで聞いてね?貴方がいてくれて良かった、って、常々思うの。

ほら、私って人見知りじゃん?でも君は、そんな私にもいつも声をかけてくれて。一緒に遊んでくれたり、ほら……交換日記、覚えてる?お互いの恋愛相談とかもしたよね。

貴方と居た時間、全部が宝物だよ。ありがとう。


「プレゼント」




26日


「ねぇ、このまま何処までも行っちゃおうか」

君がそう言ったのは、雨の降る夜のこと。

いいよ、と頷いた。君のためなら何処までも行こう。君の手を引いて、駆け出す。何処まで行こうか。誰も居ない街?危険の多い森?いいよ、君が望むなら。

しばらく走って、君が言う。

「帰ろっか」


「逃避行」




27日


貴方が手を振っている。

とても優しい顔で、私の名前を呼んで。

私は貴方に駆け寄って、彼を抱きしめる。彼も私を抱きしめ返してくれて、私たちはそのまま話す。積もる話が沢山あるの。何を話したかは、覚えてないけど。


朝、目を覚まし、私は窓の外に目をやって言った。

「またね、お兄ちゃん」


「もういない貴方」




28日


今日は、決戦の日。

いわゆる「勝負服」ってやつを着て、いつもより厚化粧。高いヒールだって履いちゃうもんね。極めつけは鏡の前で笑顔の練習。うん、ばっちり。

貴方のために、ここまでするんだから。Yesと言ってくれなきゃ困るよ?

待ち合わせ場所、君が目を見開く。私は笑って。

「別れよう!」


「貴方はボーイッシュな私が好き」




29日


この世には、沢山の糸が張り巡らせられている。

私はその糸に触れ、引く。すると向こうも、糸を引き返してくれる。それを手から感じて、私は安心する。ああ、貴方はここにいるんだね。

ある日、糸を引く。貴方は引き返しては来なかった。どうしたの?糸を手繰り寄せて。

貴方はもういない。


「縁の切れ目」




30日


それは、革命だった。

とても鮮烈な感覚が私の脳天を突く。息が、できない。目の前には沢山の色彩で、目がチカチカする。ああ、私は生き方を忘れてしまった。今までどう呼吸をしていたのか、今までどんな表情で生きていたのか、全部わからない。

貴方の生き方が、私の生き方を変えてしまったの。


「貴方革命」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る