第6話

 給食の時間にそれとなく観察してみたが、いつもと違う視線を耀司に送る生徒はいなかった。うちのクラスの子ではないのかもしれない。


「じゃあ小夜ちゃん、俺帰るわ」

 給食を片付けたあと、耀司は帰宅のあいさつをする。当たり前のように帰ろうとした腕を、思わずひっつかんだ。

「なぜ、許されると思った?」

「三時間も勉強したし、給食も食べたから。もう良くね?」

「今日は次で終わりだから、最後までいて。大丈夫、君はがんばれる子よ」

 えー、と不満そうに答える耀司を、生徒達がちらちらと見る。

「分かったよ」

 全く、もう。

 あきらめて席へ戻る背中から滑らせた視線が、女子の一人と結びついて小さく驚く。向こうも驚いて、あわててうつむいた。時田ときた愛海まなみ。大人しく目立たない子だが、耀司との接点はある。

 昨年、耀司と三年生が生徒玄関でけんかをしたらしい。愛海はその場にいて巻き込まれ、割れたガラスでケガをしたと記録にあった。でもあれは三年生がふっかけたけんか……なんて、愛海にはまるで関係ない話だ。

 やっぱり、こうなってしまうのか。

 昼休憩のゆるい空気が広がる中を抜け、職員室へ向かった。

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