第6話
給食の時間にそれとなく観察してみたが、いつもと違う視線を耀司に送る生徒はいなかった。うちのクラスの子ではないのかもしれない。
「じゃあ小夜ちゃん、俺帰るわ」
給食を片付けたあと、耀司は帰宅のあいさつをする。当たり前のように帰ろうとした腕を、思わずひっつかんだ。
「なぜ、許されると思った?」
「三時間も勉強したし、給食も食べたから。もう良くね?」
「今日は次で終わりだから、最後までいて。大丈夫、君はがんばれる子よ」
えー、と不満そうに答える耀司を、生徒達がちらちらと見る。
「分かったよ」
全く、もう。
あきらめて席へ戻る背中から滑らせた視線が、女子の一人と結びついて小さく驚く。向こうも驚いて、あわててうつむいた。
昨年、耀司と三年生が生徒玄関でけんかをしたらしい。愛海はその場にいて巻き込まれ、割れたガラスでケガをしたと記録にあった。でもあれは三年生がふっかけたけんか……なんて、愛海にはまるで関係ない話だ。
やっぱり、こうなってしまうのか。
昼休憩のゆるい空気が広がる中を抜け、職員室へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます