-24- 揺らぎ
畑の手伝いといっても、私にできることは雑草を抜くことくらいで、ちょっと恥ずかしい。部屋で植物を育て始めるまでは、ここまでお手伝いに積極的ではなかった。私は、少しずつ変わっていく。
「琴ちゃん、お昼にしようか。琴ちゃんとケンちゃんの好きなものにしようね。何がいい?」
「フルーツタルト!」
「それはおやつなんじゃないのかい。」
「た、確かに…。」
「ケンちゃんは何がいいかい?」
「お寿司!」
「ここは山奥だからねえ…。」
結局、そうめんが出てきた。最初は少しがっかりしたが、
「そうめん、うまっ!」
「ワサビが効いてる。」
おばあちゃんがご近所さんからいただいたワサビがたいそう美味しいのだ。
みんなでそうめんを山ほど食べた。そうめんにかかったお金は半端なかっただろう。
「琴葉、さっき手紙を机の上に置いてただろ。」
「え、どうしたの?」
「読んだけど。」
「は!?ふざけんな!」
「絶対渡せよ。」
「なんで?」
「自分の気持ちを、なかったことにするのは良くない。」
「…。渡さないのは、私の勝手じゃん。」
「琴葉のために言ってるんだよ。」
「は?ケンちゃんが?私のために?」
「俺はいつも琴葉のために言ってるんだよ。お前はいつも俺にムカついてくるけど。」
…えっ。余計なお世話だと思いつつも、渡したくないという気持ちが揺らぎ始めた。勝手に手紙を読んだのは絶対許さないけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます