-17- 終業式

咲人くんの様子がおかしい。


今日は一学期の終業式。私は夏休みが始まるワクワク感と、みんなとしばらく会えない寂しさの間でなんとも言えない気持ちになっていた。


「咲人くん、おはよう!」

「…え、あ、ああ、おはよう。」

どうしたんだろう。体調でも悪いのかな。


「秋奈、咲人くん、おかしくない?」

「ああいう時はそっとしておくのがいいんだよ。」

「でも、気になる。」

咲人くんは別のクラスだから、あまり情報が入ってこない。気になる。

終業式の話も上の空で、結局、先生の話は全部、後から秋奈に聞いた。

私の様子もおかしい。


終業式が終わり、私は咲人くんに直撃することにした。

「咲人くん!一緒に帰ろ!」

「珍しいね。いいけど。」

「咲人くん、今日具合悪そうだったから。」

「え…そう見えた?」

「うん。」

咲人くんは、なんとなく青ざめた顔をしていたので、余計心配になった。


「実はね…昨日、フラれちゃったんだ。」

「…。」

「…咲人くん!よかった!」

「え?」

「てっきり、咲人くん病気かと…。」

「俺は全然大丈夫じゃないんだけど…。」

「いや、大丈夫だよ!咲人くんモテるし!」

「…。」

「咲人くん、カラオケ行こ!カラオケ!」

「これから塾があるんだけど…。」

「だって、好きな子も通ってるんでしょ?」

「うん。」

「会いたくないでしょ?」

「…うん。」

「一日ぐらい休んだって、咲人くんなら全然平気だから!カラオケでパーっと憂さ晴らししよ!」


私たちは、フリータイムで3時間歌った。咲人くんも熱唱してたし、私も結構歌った。ただ、カラオケの後、真面目な咲人くんは塾に行ってしまった。塾の時間に間に合っちゃったんだって…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る