-16- 初めてのデート

「礼央ーっ!」

私は、動物園の入り口に向かって、走った。

「10時30分…30分も遅刻しちゃった!ごめん!」

「そんなことだろうと思ったから、僕もギリギリに着くように来たから大丈夫だよ。」

「言い訳していい?私、このお弁当作ってて。何度も失敗したから…。

こう見えて、5時起きなんです!」

「えっ!?琴葉ちゃんが、手作りのお弁当を?」

「うん!だって、私の中の動物園の思い出は手作りのお弁当と共にあるから。」

「すごい嬉しい…」

「そんなしみじみしないでよ。早速、動物でも見ますか!」

こんなに、いつにもなく喜ばれると、どうもやりづらい。


「可愛い!パンダ!ぬいぐるみみたいかと思ってたら、白黒のクマって感じだねー。」

「クマの仲間だからねー。」

私たちは動物に夢中になって、スマホでパシャパシャ写真を撮った。

「LINEのプロフィール画像、どの動物にしようかなあ。」

「僕はプロフィールはあずきのままで、背景の画像を変えよう。」

「え、私、背景の画像、初期設定のままになってた。」

いろんな動物を見ながら、動く動物たちのベストショットを求めた。


「LINEをカスタマイズしたところで、お弁当にしますか。」

「やった!琴葉ちゃん、ありがとう。お菓子とか買ってくればよかった。」

「気にすんな。お菓子なんて胃袋に入らないくらい、大量なおにぎりを握って来たからな。」

「おにぎりの具が気になる。」

「礼央、何味が好き?」

「梅。」

「渋いな。でも、ご安心を。梅、しっかり作って来ましたぞ!」

「ありがとう!」


礼央が目をキラキラさせている。私が大きなお弁当箱を開けると、

「え!琴葉ちゃん、僕、おにぎりだけだと思ってた!ブロッコリーにトマト、卵焼きに、唐揚げまで。」

「高校生男子の胃袋の大きさを分かっている私、ナイスでしょ!」

二人で美味しいねと言い合いながら食べた。付き合うって、こういうことなのかな。ときめきが何もないけど、礼央はときめいてくれてるのかしら。


お弁当は、綺麗になくなった。嬉しい。


「礼央、午後は園内のモノレール乗ろっか。」

「いいね!僕も乗りたかったんだ。」

モノレールに乗り込み、動物をモノレールから見下ろす。

「琴葉ちゃん、どの動物が一番気に入った?」

「なんでしょう。礼央は、どれ?じゃあ、せーので言おうか。」

「せーの。」

「プレーリードッグ!」

と、礼央。

「ニホンザル!」

と、私。

「全然違うじゃん。あはは。だってさ、ニホンザル、個性がそれぞれあって見てて飽きないんだもん。」

「プレーリードッグにも個性あったよ。」

「そうなのかもね。でも確かに、立ってる姿、可愛かったな。」


あっという間に夕方が来た。


「あー、楽しかった!」


お土産物屋さんで、お揃いのパンダのキーホルダーを買ったら、今日はもう、またねだ。


「明後日、終業式だよね。夏休み、楽しみだなあ!」

「夏休みも、夏期講習でまた会えるね。」

「あ、そうだった!うちの高校、学校なのに夏期講習あるんだった!」

これだから進学校は。


でも、夏期講習、なんとなく嫌じゃないんだよな。

なんでだろう。

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