-14- 球技大会
球技大会初日、私のチームは一回戦を突破した。そのまま、二回戦へ。
秋奈が、「頑張れ」と書いてあるうちわで、パタパタと顔をあおぎながら、応援してくれている。そして、秋奈の隣には礼央が。
「琴葉ちゃーん。頑張れー!」
「あざーす。」
サーブ、行きますよー。
「琴葉ちゃんナイス!」
チームメイトの声がかかる。なんか、楽しいぞ。
しかし、相手のチームは、なかなか得点を許してくれない。さらに、私のミスが足を引っ張る。
「琴葉ちゃん、落ち着いて!大丈夫だから」
「琴葉ー!」
私は、申し訳なさと怖さを感じ始めた。でも、私のチームは、補欠が不在だ。補欠は二人いるのだが、チームメイトの一人が急に転校してしまい、もう一人は、腕を骨折してしまっているのだ。礼央が、大きな声を出した。
「琴葉ちゃん、落ち着いてー!」
礼央が大きな声を出している。礼央には、どちらかというと、穏やかで、あまり大きな声を出さないイメージがある。バスケの試合が終わった咲人くんも、応援に駆けつけてくれた。それなのに、私は、混乱してしまっていた。
結局、私達のチームは負けてしまった。私の目から、大粒の涙がぼろぼろこぼれた。
「うう。みんな、ごめんなさい。」
「琴葉ちゃん、大丈夫だよ。誰も迷惑なんかじゃない。琴葉ちゃんのせいじゃない。」
申し訳なくて、怖くて。そして、「負けて悔しい」という、生まれて初めての感情が芽生えたのを感じた。でも、最後に、みんなで笑顔でグータッチをした。
秋奈と礼央と咲人くんが、私の周りに集まってきた。
「成長したじゃん。」
と、秋奈。秋奈に言われると、なぜか上から目線感がないんだよね。
「へへへ。」
次は、礼央の卓球個人戦の応援だ。と、思ったら。
「僕は琴葉ちゃんが一回戦をやっている間に、一回戦で負けてるから。」
なんですとー!
「え、応援出来なかった、ごめん。」
それと同時に、
(恋人らしいことが出来なくて、ごめん。)
と、思っていた。恋人らしいこと、してみたいな。
「礼央、今度、どこか行かない。」
「うん。二人で?」
「うん。二人で。」
勇気を出して言ったので、ちょっと耳が熱くなった。
「いいね。何しようか。」
今は、礼央の方が、落ち着いているように感じた。
礼央は、私に告白するまで、どれだけ悩んだのかな。
礼央は、私に告白した時、どれだけ勇気を出したのかな。
そして、私は、本当に礼央のことが好きなのかな。
もちろん好きだけど、どういう「好き」なんだろう。
でも、行動してみないと、始まらないことがある。
行動してみないと、変わらないこともある。
そして、行動してみないと、分からないこともある。
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