-12- 人間アレルギー

放課後、礼央も私も球技大会の練習に行ってしまって、勉強は家に帰ってからしているので、付き合ってる感は相変わらずゼロ。でも、私は、練習のモチベ満タンだ。だって、練習を真面目にやり出したら、運動の楽しさを知ってしまったから。今まで、体育は、みんなの迷惑になるし、苦手だし、とサボってばかりいた。練習を真面目にやり出してから、他のクラスメイトの目線が優しい。

「桂木さん、頑張ってるね!」

とか、

「今日はサーブ入るといいね!」

とか、声をかけてくれるようになった。嬉しい。


秋奈が、私のところにやって来た。

「秋奈、彼氏さんと全然会ってないけど、いいの?」

「それはこっちのセリフだ。私はバイトで会ってるからさ。それに、バイトで練習出られてない日もあるんだから、バイトがない日ぐらい、球技大会の練習、頑張らなきゃ。」

「私もそういう態度だったら、もっと体育出来るようになったかもしれないな…」

「出来なくてもいいんだよ、真面目にやれば。」

「確かに。ねえ、サーブのコツ、教えて!」

「琴葉は、ボールに手を当てる場所は上手くなってるけど、力が足りないから、届かないんだな。」

「めっちゃ力入れてやってみる!そーれ!」


…飛んだ!ネットを越えた!


「琴葉、ばっちり入ってるじゃん。」

「やったー!」


「桂木さん、入ったじゃん!」

「おめでとう!」

試合でもないのに、クラスの子達が声をかけてくれた。嬉しい。

「ありがとう!ところで、みなさん、お名前は?」

「え!桂木さん、私たちの名前知らないの?もう一学期も終わるのに!?」

「すいません…」

「桂木さん、私たちと仲良くする気ないでしょ!」

「え?」

…そうかも。小さな人間関係で逃げていた。そっちの方が楽だからな。

「そんなことないよー、ははは。」

「え、じゃあ、仲良くしよ!琴葉ちゃんって呼んでいい?」

「え?」

怖いよー。傷付くこと、色々言われそうじゃん。

「えーと、いいよ!」

「琴葉ちゃん、私たちと一緒にラリーとかパスの練習しない?」

「え?」

なんか話が大きくなってないか。緊張してきたぞ…

「こっち、こっち!」

はいはいー。行きますよー。


ラリーの練習が始まった。むむ難しい。全く出来ない。

「琴葉ちゃん、なんで出来ないのか分かった!ちゃんとパスをする相手を見ないと。なんでか分からないけど下向いてるから。」

「ちょっとビビってて。」

「私達、琴葉ちゃんが上手くパス出来なくても怒らないから、安心して。」

あれ、この人達、思ってたより怖い人じゃないかも?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る