-11- 努力は報われなくても。

期末も無事終わり、私達の学校では、球技大会が始まった。

私と秋奈は、バレーボール。咲人くんは、バスケ。礼央は、卓球。

学年対抗なので、急に学年のみんなが仲良くなっているのを感じた。

でも、私と礼央は、付き合い始める前と、仲の良さが全く変わっていないような…。琴葉ちゃんってなかなか呼んでくれないし…。


「琴葉、バレーボール全然上手くならないね!」

と、秋奈。

「サーブが入るようになりたいです!」

「桂木さん、悪いんだけど、このチームの補欠でいいかな?」

クラスの子に声をかけられた。

「え、てことは、サーブもなし?」

「なし。」

「それでお願いします!」

呆れ顔の秋奈と目が合ってしまった。なんか、すみません。


礼央も運動出来ないんだよなあ。チームの人に迷惑をかけたくないから、個人種目の卓球にすると言っていた。偉いなあ。まあ、結果的に、私もチームに迷惑をかけなくなった訳だがな。よし、礼央を見に行ってみよう。


体育館の卓球場。とても真剣に卓球を練習している礼央に、私は、打ちのめされた。私だったら、個人種目である段階で、そもそも練習には参加しないで家に帰るだろう。礼央は、勉強も頑張らないといけないのに。

「斉藤を見に来たの?」

と、クラスの子。

「なな、なんでそれを」

「だって、桂木さん、斉藤と仲良いから。」

他人から見ても、そう映るのか。嬉しいような恥ずかしいような。

「斉藤、すごいんだよ。練習日は毎日練習に来てる。もしかして、球技大会、一回くらいは勝てるんじゃないかな。」


礼央、かっこいいな。運動って、出来る人だけがかっこいいんじゃないんだ。

汗を流して、一生懸命頑張る人が、かっこいい。


「礼央ーっ!頑張ってー!私も練習頑張るねー!補欠だけどー!」


礼央がこっそり手を振ってくれた。よし、私も。


校庭にある、バレーボールの練習場に向かって私は走った。

さっき、補欠宣告をしたクラスの子に、

「サーブ練習出来るコートってある?」

と、聞いた。

「あ、あそこのコート一つがサーブ練習用だよ。」

私は、「やるじゃん。」という顔をしている秋奈にピースサインをして、コートに向かって走って行った。もし誰かが熱を出して休んだ時のために、私は、頑張らないといけない。まあ、私が試合に出ない状況が、一番平和だがな。

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