-8- 植物は家族です。
学校に着くと、私は秋奈に言った。
「ねえ、お揃いの植物、育てない?」
「それ、いいね。楽しそう。」
「礼央と咲人くんにも声かけてみるね。」
「あの二人、植物に興味あるのかなあ。」
声をかけてみると、二人も植物を育てていいとのこと。
「なんの植物にする?」
「小学校の朝顔以来だから、簡単なやつがいいな。」
と、礼央。咲人くんもうなずいている。
「今度、四人が都合いい時にホームセンター行こう。」
「了解。」
「そういえば、咲人くんって、部活入ってるの?」
「塾があるから、入ってないよ。入るかどうか悩んだんだけどね。」
「どこに入りたかったの?」
「料理部」
「いいねえ、料理部!私も入れば良かったかなあ。」
「あんたは勉強もっと出来るようになってからじゃないと。」
一度失った信頼を取り戻すのは難しい。
「じゃあさ、今年一年勉強頑張ったら、来年何か部活に入ろう!」
「楽しそう。友達増えるんじゃない?」
「友達もだし、恋人も出来るかも!」
私達は、お揃いのサボテンを買った。とても小さな植木鉢に入っていてなんだかかわいそうだったので、みんなで植え替え用の土や、ひとまわり大きな植木鉢を買って植え替えもした。
自分だけの苗も欲しいと思って、コーヒーの木の苗木も買った。本当は大きな観葉植物をどどんっ!と置きたかったのだが、予算と勇気の関係上、こうなった。これから、よろしくね。ネットには親切な人がたくさんいて、育て方の情報がたくさん出てくる。コーヒーの木から、コーヒー豆も取れるらしい。わくわく。
お母さんの私を見る目も、変わってきた。
「お母さん、ホームセンターに魚たくさんいたんだけど。」
「あんたが三年ちゃんと植物育てられたら、育てていいわよ。」
…やったー!
私達四人で、それぞれの部屋の机の窓際にサボテンを置いている。
四人とも、ちょっと違う種類の小さなサボテンにした。
勉強の合間に、サボテンを眺めると、みんなのことを思い出す。
私は、青春って、もっと大げさなものだと思っていたけれど、私の青春はこれでいいんだと思えた。…でも、そういえば私、恋愛、全くしてないじゃん!
小さい頃、バレンタインの日にみんながチョコを渡すのを横目に見ながら、自分もホワイトデーのお返しが欲しくてチョコを配った。誰かと付き合ってみたいな。誰かを好きだと思うには、色んな人と出会うしかないのかな、とも思った。
「あんまり気にし過ぎない方がいいんじゃないかな?」
秋奈の彼氏さんの言葉が脳内に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます