-7- 嬉しいサプライズ

「期末終わったー!」


期末テスト最終日、最後の科目の終わりを迎えるチャイムが鳴った。


「秋奈、どうだった?」

「まあ、いつも通りかな。」

「私、ものすごい成績上がった気がする!」

「毎日放課後に勉強してたもんね。すごいよね。」

「それだけ私には余裕がないということです。」

「まあね。」


定期テスト最終日の下校後の時間は、私のお楽しみ時間と、中学の時から決めている。

自転車に乗って、隣町まで出向いて特典付きCDを買ったり、可愛い雑貨を見たり。

可愛い雑貨って、いつも可愛いと思うのに、なかなか買わずに帰ってしまう。いつか大人女子になったら、可愛い雑貨をいっぱい買うんだ!と、いつも思っている。


でも、今回、私が行くところはいつもと違う。なんと、私の向かう先は、ホームセンターだ。でも、親に頼まれた日用品の買い物のためではない。私の目当ては園芸コーナーだ。


家族に、ペットを育てるのはあなたには難しいと言われているのだ。でも、植物なら、育てられるかもしれない。


どうせ育てるなら、食べられるものがいいな。ハイビスカスみたいな、派手な花が部屋にあっても楽しいな。なかなか楽しいぞ。散々悩んだ結果、その日は買わずに家に帰った。


「おかえりー。今日テスト明けでしょ。どこ行ってたの。」

「近くのホームセンター。」

「あら、洗剤買ってって欲しかったわー。言ってくれたら頼んだのに。」

なんか、すいません。

「あのさ、育てやすい植物って、なんかある?」

「あら、あなたに植物なんて無理よ。小学校の時、いつもお母さんが代わりに水やりしてたじゃない。」

「ぐう。」

「そもそも、あなた、無責任で衝動的なのよ。すぐ買うって言い出して放置するのが目に見えてるわ。」

…ぐう。

でもさ、ここで育てなかったら、私は、成長出来ない気がする。お母さんを説得する何か…そうだ。


「お母さん、もし、期末テストで一科目も赤点なかったら、植物育ててもいいですか?」


お母さんは、びっくりした顔をした。

「あなたが赤点取らないわけないじゃない。」

今までの私はそうだった。なんだか制服が可愛いという理由だけで、ろくに勉強もせず、運だけで高校に入った私だ。でも、今の私は違う。そして、数日後に返ってきた成績表を見て、お母さんは言った。


「ホームセンター行って、植物買ってきていいわよ。ただ、責任持って育ててね。あと、ついでに食器洗い用のスポンジ買ってきて欲しいんだけど。」

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