-5- 咲人くんの場合

帰宅部にしたことを一度は後悔した私だったが、すぐに賢明な判断だったことを知る。


「勉強、全然ついていけないよーっ!」

「あんた、ほんと塾入ったら?」

「秋奈、なんで勉強分かるの?」

「授業聞いてれば分かるよ。琴葉は、授業中寝てるんじゃない?」

「起きてるよー。でも、何が何だか。」


授業が本当に全然分からない。

「礼央、勉強教えてくれない?」

「教えるのは上手くないけど…放課後ならいいよ。」

「あの…頼んでおいてこう言うのもおかしいんだけど、自分の勉強、大丈夫なの?」

「だって、困っている人見たらほっとけないじゃん。直に頼まれてる訳だし。」

「なんちゅういい人…!」

「あと、今のところ授業だけで理解出来てて、暇だし。」

「え?こないだの、大学受験の対策で忙しくて『恋活』出来ないって言うのは?」

「その話は、一旦忘れよう。それに、こないだ桂木さんに勉強教えてて思ったんだけど、他の人に勉強を教えるのは、いい復習になるみたい。」

「勉強好きなんだね。」

「大学で学びたいことがあるから。」

「ふうん。ねえ、それって…」

「琴葉ちゃん、おはよ。」

「咲人くん!」

咲人くんは、なんだか見た目がかっこいい。かわいいっていうのかもしれない。

そして女子にモテるらしい。いつも、色んな女の子から話しかけられている。そして、そんな咲人くんが、駄菓子屋の日から毎日私に挨拶をしてくれる。もしかして、私のことが好き…?


「咲人くん、塾って、どんなことをするの?」

「学校よりもちょっと難しいことを、学校よりも少し進んだ進度で進めていく感じかな。」

「咲人くん、そんな高度なことを学んでいるのか!なんで、そんな難しいことをサクサク学びに塾へ?」

「…実は、中学の時から好きな女の子が通ってて。違う高校なんだけどね。」


なんだ、私のことが好きなわけじゃないのか。


「手応えは、いかがですか?」

「…俺がなかなか声をかけられなくて。違うクラスだし。」

「咲人くん、女子に人気なのに。他の子じゃ、ダメなの?」

「うん、今は。」


自分が好きになった人から好きだと思ってもらえることって、難しいね。

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