-2- 出会い!出会い!
私の高校には、帰宅部がある。秋奈は、バイトが忙しいので帰宅部だ。私も、色々やる気がないので帰宅部だ。でも、帰宅部に入部届を出したことを、すぐに後悔することになる。
「出会いがなーい!!!」
私が秋奈と仲良くなったきっかけは、校門の前に秋奈の彼氏さんが迎えに来ていたところを、私が見つけたことだった。コミュニケーションが苦手でも、人間、本気を出せばなんとかなる。でも、そんなに本気になるような場面は少なく、友人はもう秋奈がいるため困っていないし、恋愛に発展するような出会いもない。
そして、私は大変なことを忘れていた。私は、この高校にギリギリの成績で入ったのだった。初めての中間テストで、早速、赤点を取ることになる。
「秋奈、勉強教えて!」
「バイトとデートでそんな暇ないわ。」
「バイトで彼氏さんと一緒なんだから、デートなんかする必要ないじゃん!」
「大いにあるわ。あ、斉藤なんてどう?」
「どの斉藤?」
「斉藤礼央。あの中間テストの順位の貼り出し見な。学年一位だから。」
「これは、出会いの予感!礼央ーっ。勉強教えてーっ。」
「早速、名前呼び捨てかい。距離感が面白いな。」
秋奈のツッコミには目もくれず、私は斉藤礼央の元へ馳せ参じた。
「あ、桂木さん。僕、そんなに教えるの上手くないんだけど。」
「勉強出来る人あるあるだな。」
「はは…」
もしかしたら、斉藤礼央は、私の最初で最後の恋人になるかもしれない。
これは、一言一言のコミュニケーションを大事にしなければならない。
私は自分に言い聞かせた。
「礼央って、付き合ってる人とかいる?」
略奪は良くないからな。
「…いないよ。」
「今までは?」
「一人もいない。」
(出会い、出会い…!)
なんか、妙なアドレナリンが出てくる。
「私達、付き合ってみない?」
「…へ?」
「…だめ?」
「だってさ、数分前に初めて話したばっかりじゃん。そこはさ、仲良くなってからじゃないと。」
出た、私のコミュニケーション能力の欠如。そして妙な距離感。
でも、ここで引き下がる私ではない。
「じゃあさ、一緒に、『恋活』してみない?」
「うーんと。」
「…だめ?」
「あんまり、恋愛とか興味なくて。大学受験に向けて対策とかしておきたいし。」
「え!?まだ、高校入学したばっかりだよ!?」
そこが、赤点を取る人間と学年トップの差か。でもここだけは譲れない。
「とりあえず、追試受けなきゃいけないんで、勉強教えて下さいっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます