ようこそ裏側へ
全く……雨宮のヤツ……。
暗い夜道を歩きながら、ため息をつく。
連絡が来たと思えば、印刷して来てという雑用だった。
恐らく、何かしたそうな俺を見て仕事をくれたのだろう。
優しいのか優しくないのか微妙なラインだ。
「……あれ?」
いつの間にか見覚えのない空き地に入っていた。
「こんなところあったんだ……」
「おやおや……?お客様ですか……?」
前を見ていた筈なのに、急に黒いコートの男が現れた。
「誰ですか……?」
「私は黒コートさんです」
「めっちゃ偽名!?しかも、コートじゃなくて着てるの執事服だよな!?」
「プライバシーがありますので」
めっちゃ怪しい……。
「さて。普通なら、この空き地に入れない筈なんですが……」
黒コートの雰囲気が変わる。
「貴方……一体何者なのです?」
「!?」
なんだ!?急に寒気が止まらくなった!?
「おや……。素人でしたか。失礼……」
止まった……?
「ふむ……。お詫びにお茶を入れますね」
黒コートが指を鳴らすと、青空が広がりテーブルが現れた。
その上にはティーセットが置いてある。
「なんなんだ……?一体……」
「どうぞお掛けになってください」
俺は恐る恐る座る。
「先程は失礼しました」
「い、いえ……」
「何も分からないままというのも失礼だと思いますので、説明させていただきます」
「世界には、裏と表があります。
裏は魔が、表には人が。
これらは普通は交わらないです。
そして、貴方たちは表側の人間です。
ですが、稀に表側で産まれたのに裏側の性質を持つ人が産まれます。
そして、反対に裏側のモノが表側の性質を持つことがあります。
貴方は、裏側の性質を持っている為ここに迷い込んだ様ですね」
黒コートは紅茶を飲んで一息つく。
「なるほど……?じゃあ、急に青空になったのはどういう仕組み?」
「ああ、それは能力です」
「能力……?なんで急にファンタジー要素出てくるんだよ……」
「私のは、ハウジング能力です」
「え、教えていいものなんだ」
「いえ、ダメです」
「ダメなのかよ!」
なんで教えるんだよ。案外抜けてるのか……?
「まあ、貴方は害にならないから教えただけです」
「どういう意味……?」
「何時でも貴方を殺せるという意味です」
「…………確かに」
「おや。もう少し怖がるかと思いました」
「この空間はハウジング能力で作ったんだろ?なら、黒コートさんのさじ加減で俺は殺せるだろ?
なのにまだ死んでないから、良いかなって」
「ククク……いいですね……。気に入りました」
テーブルは消え、黒コートは遠くに居た。
「本来なら貴方を裏側にそのまま放置するつもりでしたが……。気が変わりました。
代わりに、貴方の力を引き出してあげましょう」
そう言うと黒コートは指を鳴らす。
そして、ザクっという音がした。
下を見ると俺の体がふたつに別れていた。
「え?」
「ようこそ!裏側へ!私たちは貴方を歓迎しますよ。橘守さん?」
「ああああああああああああ!!!!!!???」
痛い痛い痛い痛い!?
なんだよ……これ……!?
俺が一体何をしたって言うんだよ!
そして、また、指が鳴る音が聞こえた。
「雨宮……」
ザシュッ
◇
「これで良かったですか?」
黒コートが、後ろを振り向くと、何も無い所から1人の男が現れた。
「ああ。これで雨宮ヒナタも巻き込める……」
一種で間合いを詰め、その男は黒コートの首を絞める。
「だが、勝手な真似をしてくれたな……?橘守の能力の厄介さを知ってるだろ……?」
「ええ……」
「なら、何故あんな真似をした?」
「私は雨宮ヒナタを守る力を与えただけですよ……」
そして、男は手を離し、黒コートを殴り飛ばす。
「ふん……。まあいい。裏側のモノも表側に出始める時期だからな……」
精々、その力で守ってみせろ……出来るものならな……。
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