美少女……ちょっと憧れていた

俺が……美少女だと…?

何故だ……?俺の名前はヒナタだ。

男だ。オタクだ。社畜だ。

なのに……。



「女の子になっている……?」



銀髪の髪に、整った顔。

目の色……赤と金だ。え?オッドアイ?

珍しいねー。

身長は……百五十あるかないかぐらいじゃないか?

肌は……うお、すべすべだぁ。

胸はストンだけど、それはそれでいいと思います。



「あのーヒナタさん?何をしてるんですか?」


「俺の体の確認……」


「そんなに気になります?あー、やっぱり昔と比べて成長したなーって思ったりします?」


「昔……?俺の昔は男だった……」


「はい?男……?ふふっ、こんなに可愛らしい男の子なんて見たことありませんよー?

それに、昔も今もあなたは女の子ですよ?

私が保証します!」


「そう……覚えてない……」



ふむ、だとすると……。オタクの俺の推理によると……。


どうやら、俺は美少女に転生したらしい。


うーむ、美少女ねー。実は結構憧れていたりする。

だってさ!俺が美少女になったらーって妄想したりしない!?

誰だって、すると思うんだ!



「先生!こっちです!」



あ、ベテラン看護師さんの声だ。



「はいはい、失礼しますねーって本当に起きてる……」


「信じてなかったんですか!?」


「いやさ、だって十年だよ?十年も植物状態だったら普通なら目覚める可能性はほぼゼロだよ」


「確かに……」


「え?君が納得するの?」



思わず頷いてしまった。そりゃ、十年も寝ていたのに、今日急に起き上がってみ?

ほぼゾンビじゃない?

あ、当事者の俺が言うんだから批判はよして?



「まぁ、今日は軽く診察して、明日詳しく検査をするね」


「はい……」



そして、俺の診察をし、結果は………。



「うん、普通だね。普通」


「ふつーですか……」



ふつーだそうだ。

ふーんで終わったよ……。



「あ、親御さんには連絡入れてあるからもうすぐ来ると思うよ?」


「ありがと、先生」


「はいよー」



しばらくして、病室のドアが開いた。



「あ、あ、あぁ……」


「ホントに………起きたのね………」



俺を抱き締めて、泣く二人。

多分、この人が俺の今の両親なんだろう。

優しそうな人だ。

胸の内があたたかくなる………。



「あ……俺……」


「大丈夫よ……もう大丈夫…」


「あれから十年も経ったんだ………。こうして抱きしめるとヒナタが大きくなったのを感じるよ………」


何か胸に込み上げてきた。

そして、俺は年甲斐もなく泣いた。

こんなにあたたかいのは何年ぶりだろうか……。

前の人生でもこんなことは無かった。



「……さて、話をしようか。私はヒナタ、君の父親だ」


「私は貴方の母親よ。覚えているかしら?」



俺は首を横に振る。

申し訳ないが記憶には無かった。



「そう……か。まぁ、仕方のないことだ。覚悟はしていた。こうやって意思疎通ができるだけでも神に感謝しよう」


「そうね……。これから、私達の思い出を作ればいいものね」



俺たちは話をした。

俺の誕生や、俺の体の話、俺の家族のこと。


俺の名前は雨宮ヒナタ。誕生日は七月八日、姉と弟がいるらしい。

俺が五歳の時に寝たきりになったらしい。


つまり、俺は今、十五歳ってわけだ。


まぁ、そうなんだーで聞いていた。

だって、あんまり実感わかないんだもん。


後、来年から高校生だってさ。

もう一度青春を送れるって素晴らしい。



「まぁ、無理せずゆっくりとするといい。

私達がサポートしよう」


「ありがとう。お父さん」



笑顔でお礼を言う。お礼って大事だからね。



「おぉ、可愛い……」


「そうね……またこの子の笑顔が見れて嬉しいわ……」



ちょっと、お父さんとお母さんは親バカみたいなところがありそうだ。





あれから一週間。俺は家に帰ってきた。

すっごい豪邸なんですけど。

え?俺の家ってお金持ちなの?

だって、執事とメイドさんいるんだけど。



「「「おかえりなさいませ」」」


「お、おー」


「ここが私達の我が家だ」


「す、すごい!」



ひゃっほい!テンション爆アゲなんですけどー!!!!!

……ちょっと古かったか?


まぁ、すげぇとしか言いようがないのだが?


色々見て回った。めっちゃ広かった。

俺の部屋なんか、やべぇほど広かった。

前世はアパートに住んでいたけど、その部屋の五倍は広そう。すごっ!

けど、慣れるのに一週間はかかりそうだ。



「集まってもらって悪いな。今日、私の娘が家に戻ってきた」


「初めまして……?お久しぶりです……?俺の名前は雨宮ヒナタと申します。

どうぞよろしく…」


「「「パチパチパチ」」」



拍手がなったのでこの挨拶で良かったのだろう。

すると、綺麗な女性が前に出てきた。



「久しぶりね、ヒナタ。覚えてないでしょうけど私は貴方の姉よ。

あ、私の名前は風夏よ」


「よろしくお願いします」


「あ、敬語は無しよ。私達は家族なんだから」


「そう?なら、よろしく。ふうかお姉ちゃん」


「ひゃう!?か、可愛いわね。さすが、我が妹」



胸を抑えて何かブツブツ言ってるけど、大丈夫だろうか?



「次は僕だね!僕は空大って言うんだ!よろしく!お姉ちゃん!」


「ん。よろしく。かなた」


「えへへー」



抱きついて来たのでよしよししてあげる。

前世では弟がいなかった。というか、一人っ子だった。


だから、弟が可愛い。



「あ、ずるいわ。ヒナタに抱きつくなんて。まだ私も抱きついてないのに」


「ん?ふうかお姉ちゃんも来る?」


「ひゃう!?我が妹の可愛いさが恐ろしいわ」



結局、お姉ちゃんも来た。

いい匂いがする。



「うむ、上手くやっていけそうだな」


「そうねぇ、少し心配だったけど。杞憂だったわ」



お父さんがパンパンと手を鳴らす。



「さて、挨拶もしたところでここのルールを言っておく」


「何?」


「心配しなくても一つだけだ。それは」


「それは?」


「みんな仲良くだ!」


「ズコー」



一応コケておく。お約束みたいなものだろうから。



「あぁ、娘がめちゃくちゃ可愛いのだが。望音花、どうすればいい?」


「優しく見守ってあげましょう?遥斗さん?」


「そうだな」



何気に両親の名前初めて知ったかも…。

みねかとハルトって言うんだ…。





顔合わせが終わり、自分の部屋に戻っていた。



「ふぅ。疲れた」



家族とやっていけるか不安だったが、みんな優しくて良かった。

あたたかくて幸せだ。


だけど問題がある。高校のことだ。



「一応、全部頭に入れておこう」



一応、俺には特殊能力がある。完全記憶だ。

見たもの、聞いたもの、視覚に入ったもの全てを覚える。


だから、一度読んだラノベは思い出すだけで、何度でも読み直せるというオタクにとって利点がある。

だから、気兼ねなくブックオフに売りに出せる。

けど、手元に残しておきたくて結局売らないってのがオチだ。


一時間して、だいたいのことを覚えた。いや、覚え直した。


便利だね!



「お嬢様、失礼します」



ノックがされ、許可するとメイドさんが入ってきた。



「……ん。どうしたの?」


「湯浴みはどうなさいますか?」


「入る」


「かしこまりました」



お風呂。女の子になってから初めてだな。

自分の体に欲情することはない。

てか、前世でもう性欲が枯れていたなぁ。

だって、えっちなシーン見てもなんも思わなかったんだもん。


衣服を脱ぎ、ありのままの姿になる。

やっぱり、ちょっとなれない。


カラカラと扉を開けると



「広い」



あのー、めっちゃ広いんですけど。

浴室はここですって言われた時からわかっていたけど、いざ見ると広い。

落ち着かねぇ。



「あ、メイドさん」


「はい」


「お手入れの仕方……教えて?」


「あ、かしこましました」



メイドさん、顔を赤くしてるけど大丈夫かな?

大丈夫と信じよう。


手入れの仕方を教えてもらい、覚えたって言ったらなんかしょんぼりしてた。


なんで?まぁ、とりあえずお湯に浸かろう。



「ひゅう……」



あったまるぅ!いやぁ、お湯に浸かるなんて何年ぶりだ!?

前世も合わせて十七年振りか!

いやぁ、お風呂最高!


……さて、考えよう。

俺の無口キャラみたいな今の話し方はこの体になってからだ。


んで、多分話すのが疲れるからなるべくカロリーを消費しないエコな話し方がこれなんだろう。


後、表情筋が固まってる所為か無表情らしい。


こう考えると俺の属性多いなぁ。

あれだろ、オッドアイ美少女の無口無表情さんだろ?

オタクからしたらめっちゃいいんだけど。

あぁ、たまらんわァ。


ふぁああ……。お湯に浸かると眠たくなる現象が来たぁ。

眠たい……。寝そう……。

あかん……活動限界が来た……。



あの後、なかなか出てこない俺を呼びに来たメイドさんに見つけられ、救出された。

ちょっと怒られた。

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