起点-6
黒道の聞き込みが終わり、次の聞き込み相手・屋垣の勤務先の横浜に向かうため首都高湾岸線を走っていた。
「なあ、そもそもなんだけどさ」
「何です? 寅さん」運転に集中している翔。
「本当に捜索願って出てないの?」
「出てなかったですね」
「ふ~ん」
寅三郎は気のない返事をしながら、サイドミラーを見ると後ろに黒ずくめのバイク集団がこちらを追ってくる。
「急にどうしたんですか?」翔が聞く。
「いやぁ普通はさ、加藤の家族に聞き込みするのが優先じゃないかって?」
「寅さんには、言ってませんでしたね、加藤さんの両親亡くなっています。10年前に」
「サラッと言っているけど、なんで教えてくれないの?」
「聞かなかったからです。
それに、寅さんが言い出したんじゃないですか。イエローリボンのメンバーから話聞こうって」
「そうだっけ?」
寅三郎は後ろを向き、バイク集団をもう一度見る。
「そうですよ。後ろに何かあるんですか?」先程から後ろを気にしている寅三郎に質問する。
「あの後ろのバイク集団、ヒルズから俺達を追ってきているんだよね」
「そう何ですか?」
「かぁ~」そう言いながら額を手で抑える寅三郎。
すると、二人の乗る覆面パトカーの背後を走っていた四台のバイクが近づいてくる。
四台のバイクは、覆面パトカーの四方を囲む。
いずれのバイクも二人乗りで全員フルフェイスのバイザーの向こうが見えないヘルメットを被っていた。
「なんだ。なんだ」嬉しそうにする寅三郎。
「寅さん、そこのパトライト出してください」
翔は目配せでグローブBOXに閉まっているパトライトの在処を寅三郎に教える。
「おっ、一丁派手にやってるか」
「やりません。警告です」
翔は、サイレンスイッチに手を伸ばす。
寅三郎はパトライトを取り出し、窓を開けようと開閉スイッチを押そうとする。
その時、バイクの後部座席に座っている男達が一斉に持っていた鉄パイプで四方から覆面パトカーを殴りつけると寅三郎の座る助手席の窓が割れる。
「誰が、開けてくれって頼んだよ」
寅三郎は呆れ顔で相手を見ながら、ジャケットの中に手を入れて何かを出す。
その手には、愛用の銃,コルトM19 11 A1マークⅣが握られていた。
「寅さん!」
翔が止めるよりも早く寅三郎は、銃の引き金を引く。
助手席を割った男のヘルメットに鳥モチが一面に広がり、視界が無くなりパニックになり暴れてしまい今にも転倒しそうなバイクだったが、運転手が何とか転倒するのを防ぐ。
「あの運転手。プロ級だな」転倒せずに運転を続ける運転手に感心する寅三郎。
四台のバイクはまさか発砲するとは思わず、慌てて覆面パトカーから離れて逃げようとする。
「そんじゃあ、お遊戯と行きますか!」
寅三郎はパトライトを屋根に設置する。
「はしゃがないで下さい!」
寅三郎を諌めると翔はアクセルを名一杯踏込みサイレンのスイッチを入れ、追跡を開始する。
相手はバイクなので簡単に走る車の間をすり抜けて行く。
そして、翔もまた離されないように持ち前のドライブテクニックで車を華麗に避ける。
「やるねぇ~新人君。」必死にアシストグリップを握り、体を支える寅三郎。
そのまま大黒埠頭で降りるバイク集団と覆面パトカー。
「止まれ!!!!!」
只でさえ大音量で鳴らしているサイレンに翔の警告で音割れするスピーカー。
酷い音割れに耐え切れず、耳を塞いでいる寅三郎。
音割れを気にせず警告を続ける翔。
そして、人気のいない道路に入る。
「早く止まれ!!!!!」翔もまた大声で警告する。
「止まれって言って、止まるかよ」寅三郎の一言は、サイレン音と翔の声に搔き消される。
寅三郎は、そのまま割れた助手席の窓から半身を出し前方に走るバイクに発砲する。
四台並走するバイクの一番左を走るバイクのタイヤに鳥モチが命中し、急ブレーキがかかった状態となり、運転手は身を乗り出して転倒する。
後部に座っていた男も車外へと放り出される。
弾に当たらないようジグザグに走り出す三台のバイク。
「無駄、無駄」
寅三郎はバイクのチェーンやスポークに鳥モチを命中させ残り三台のバイクを走行不能にし、男達をバイクから降ろす。
パトカーを止め応援を呼ぶ翔を置いて一人、犯人の元へ行く寅三郎。
「誰に、頼まれた?」
寅三郎の質問に答えない男達。
「そうか。黙秘ってわけね。」
寅三郎は、打ち尽くした銃に弾を込め始める。
その隙に男達は、ダメージを負った体を引きずりながら逃げようとする。
だが、容赦なく寅三郎は男達に銃を発砲して鳥モチを付ける。
「寅さん。間もなく神奈川県警が応援に来ます。」翔は、寅三郎に駆け寄る。
「あ、こいつら見といて。手前でこけた奴ら捕まえに行くから。」
「分かりました。お願いします。」
寅三郎は6人の男達を翔に任せて、最初に倒した男達を追いに行く。
だが、現場に行くと6人を倒した場所から幾分距離があり、最初に倒した2人は逃げた後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます