第4話 Who is the fight for?~誰の為の闘いなのか~

1941年7月3日

群馬県の傀儡県である千葉県は、いつの間にか、群馬県に対して債務超過となったことにより、形だけは県として残っているものの千葉県内の企業や公共事業などは群馬県に統合されることになった

そんなことが起きているにもかかわらず、不思議なことに千葉県民と一太は、なんと選挙で公職追放されたはずのファシスト政権の主導者である大西京一郎を選挙で知事に据えてしまったのだ

そして、昔暴走した歯車は凝りもせずにまたしても、暴走することとなった…


上田清司埼玉県知事「ちょっと!!

いったい、どういうことです!?」

一太「どうしたんです?」

上田「どうもこうもないですよ

葛飾地方を急に千葉県が占領したんです

最早、隣接もしてないのに

千葉県に言って、直ちに返還するように言ってください」

一太「まぁ、占領を止められなかった

あなたがたが、悪いんじゃないです?

戦争したいなら、別に、言い続けてもいいですけど」

上田「覚えておけ!!」


と、まるでコントか何かのように、埼玉県の葛飾地方は、隣接すらしていない千葉県が占領してしまい、千葉県葛飾地方と名を変えることとなった

これにより、千葉県は、3つの離れた地域を統治する不思議な県となったのである


1942年の元旦、伊香保温泉に浸かっているのは一太と橋本であった

橋本「あけましておめでとうございます

山本知事のお陰で、我が県はなんとか生存することができてます」

一太「おめでとう

そうそう

同盟県として、茨城には、茨城県の持っている資源の採掘権、売買権を統合しようと思ってね

特に、石油は絶対かな」

橋本「そんな冗談を

やはり、私共は、資源の貿易による利益によって細々と生き永らえているところでして、それを取り上げるというのは、幾ら何でも惨いというものですよ」

一太「とすると、この案は賛成していただけない?」

橋本「またまた、そんな御冗談を」

一太「そうか

いいお湯でしたね

私は、これにて失礼しますよ

また、会う日まで、お元気で…」

と言い、脱衣所に向かうと一太は、

「次会う時は、立場が違っているかもしれませんがね…」

と呟いた


そして、その月の29日、橋本知事に通知されたのは、北関東平和同盟からの追放と、群馬県による宣戦布告であった

その通告が行われたことを知ったにとりは、知事室で一太に詰め寄った

にとり「なんで、茨城県なんて攻めてるの!?

北関東平和同盟を立ち上げたときに、茨城県のことは助けるって言ってくれたじゃない!!」

一太「にとり、私は、一度でも助けるなんて言ったかい?

私が言ったのは、千葉県が茨城県を侵攻しようとしていることに対して、なんとかしてみるとしか言ってないよ

それを都合のいいように解釈してくれちゃ困るね」

にとり「そこまで、酷い人だとは思わなかったわ

もう今日をもって、貴方の秘書、及び、群馬県副知事の座を辞任します

もう勝手にやって」

と、辞表を叩きつけ知事室を退出した

一太は、一人残って辞表をじっと見ていたが、やがて、懐にしまい事務仕事に戻った


茨城県との戦争は、戦闘は、ほぼすべて群馬県の優勢で茨城県は、敗退するだけで20日ばかしで降伏することとなった

竜ヶ崎市駅の駅前で、行われた龍ヶ崎条約によるとつくば・六甲・水戸・下妻・日立・高萩の6地方を群馬県に割譲し、竜ヶ崎地方に群馬県の傀儡県である茨城県を建てることとなった

そして、それと同時に発表された死傷者数は、両県合わせ、65910人に上ったという


そして、講和会議が行われているころ、東武ワールドスクエアでにとりは福田知事に抱きしめられながら泣きじゃくっていた

それを福田は、ただ優しく頭を擦ってやるだけだったが、やがてにとりは、

「福田さん、私は、やっぱり一太が昔のように優しい人に戻ってほしいわ

失脚なんて望んでいないの」

というと、福田は、

「やっぱり君は、優しいようだね

なら、形骸化したとはいえ議会がまだあるだろう?

そして、法律や宣戦布告は議会の許可がないとできないはずだ

だから、議員をこちら側につけて、山本の独裁体制からきちんとした群馬県議会による民主主義県に戻すんだ

そうすれば、山本が今度は形骸化するが、山本の地位や名声はそのまま残るだろう」

と優しく答えた

にとりは、静かに頷き二人は、東武ワールドスクエア駅から宇都宮と前橋に向かって電車に乗った

目には、静かな闘志を燃やしながら…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る