第3話 Earthquake, concealment and determination~地震、隠蔽、そして、決意~

1941年2月12日

一太「我々は、北関東の平和の為に団結していたのにも関わらず栃木県は、ファシズム政権となり、あろうことか、陣営から脱退し我々に対して牙を剝いてきた

そのような裏切り行為は、決して許されることではなく、我が県は、同じ同盟県である茨城県と共に旧栃木県、今は、北関東中央帝県となった彼らに対して、宣戦布告する」

との声明を出し、群馬及び茨城同盟県と現在は北関東中央帝県である旧栃木県との戦争が幕を開けるのであった


そして、北関東中央帝県の知事となった小此木は、一太の声明に対して、

「何が北関東の平和の為の同盟だ

平和の為の同盟が、何故、福島県に侵攻するということになるのだ

全ては、あの山本知事がいいように使うためのものじゃないか

県民の皆さん、ここは、やはり我々こそが北関東の平和を愛する県民だということを、彼らに教えてやりましょう

そして、戦争中ということもありますので、物資の配給制、調味料や米の専売、夜20時~朝6時までは休電時間とさせていただき、憲兵による県民皆さんへの常時監視、戒厳令の発令などを致しますので、ご協力よろしくお願いします」

と、栃木県庁前で声明を発表したが、集まった県民はそれに対して反対運動をするなど、混乱が増すばかりであった


小此木は、県庁の知事室に戻り、ポツリと

「この戦争は、万が一にも我々は勝てる見込みがない

しかし、遅かれ早かれ群馬に攻められていたのも見当違いではないはずだ

福島の内堀のように、先輩が処刑されるくらいなら、私が、処刑される方がましだ

あの人は、そんなこと望んでいなくても…」

と職務机の裏の写真を見て呟いた

その写真には、20代前半だろうか、若い二人組の男が肩を組んで笑っていた

しかし、片方の男の腕は一つしかなかった…


さて、戦争の状況を見てみると、全方面が敵に囲まれている故かじわりじわりと前線は、縮んでいった


そんな中、1941年3月11日に日本の全ての県を震撼とさせる大地震が起きた

ただでさえ、会津の県でまだ神経が擦り減ってフラフラのにとりは、やっとの思いで一太に、

「三陸沖を震源とする地震が、発生して各地で被害が起きているわよ

具体的には、船橋市では液状化現象に見舞われ、いわき市・大崎市に被害が起きた模様で、一番酷かったのは、双葉市の原子力発電所で爆発事故がおきて大惨事になっているみたい

どうするのよ?」

と伝えると、一太は、まるで厄介事が増えたかのように、

「戦争中にめんどくさいことが起きたな

しょうがない、各地に物資や支援を怠らないようにしよう

そして、原発事故のことは少なくとも戦争が終わるまでは、双葉市自体を住人諸共、封鎖してしまおう」

と投げやりに言った

にとりは、あまりにも酷い内容を聞き顔面蒼白になりそのまま気を失ってしまった

しかし、そんなことがあっても結局、双葉市は、住人共に閉鎖されてしまったのであった…


そんな大震災中も復興中も北関東中央帝県との戦争中はどこ吹く風で、進んでいった

北関東中央帝県は、一向に優勢性に転向することができず、そのままずるずると後退していき、1941年4月4日に小此木は降伏した

那須動物王国で行われた講和会議では、

「小此木君、政権をとるために現職の知事を幽閉してちゃいけないじゃないか

今ようやく、見つかったよ

彼を政権に戻すために、君には、命をもって償ってもらおうじゃないか

さて、この動物園にはライオンがいるそうじゃないか、君、ライオンに食べられる最期ってのは、中々、体験できるもんじゃないよ

光栄だね」

「嫌だ!!

死にたくない!!

県民は、どうなってもいいから俺だけは助けてくれ!!」

「こいつと話していると、人間というものが汚く感じてしまうよ

さっさと、ライオンの檻に入れてやれ」

小此木は、必死に抵抗する振りをしながらこう考えていた

(こうしておけば、先輩も県民も私に対してマイナスの感情しか抱かないだろう…

そうすれば、前の知事、つまり、先輩に支持が集まるって寸法だ

先輩、私は、これで全て返せたとは言いませんが、少しは恩をかえせたんじゃないでしょうか?)


さて、小此木が、ライオンに食われているころ、福田と一太は、講和条約の内容を話し合っていた

いや、それは語弊があるだろう

何故なら、福田の頭の後ろにはつねに大澤GK長官が銃を突き付けているのだから…

ということで、結局、群馬県だけが得する内容で那須条約は終わった

内容は、

栃木、阿曽佐野、谷井田、大田原、宇都宮、那須、日光、鹿沼の8地方を群馬県に割譲し、足利、真岡、壬生の三地方に群馬県の傀儡県である栃木県を福田富一を知事として建てることとなった


そして、そのころ、助け出された福田はにとりに対して、

「小此木は、俺の為に自分からすべてを被るつもりだ

どうか、なんとか彼を止めてくれ」

とにとりにいうと、にとりは、言葉を詰まらせつつ、

「小此木さんは、先ほど、ライオンの檻に入れられてライオンに食べられたとのことです」

と泣いてしまった

それに対し、福田は、

「お嬢さんが、泣くことじゃないよ

全ては、あの山本が一番悪いんだ

今回の死傷者は、全体で133550人にも上ってしまった

その落とし前は、山本に払わせようじゃないか」

と優しくにとりを抱きしめるのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る