第2話 What do the intersecting threads weave?~交差する意図は何を織り成す?~

群馬県が、福島県に宣戦布告したニュースは、事前に知らされるべき同盟県にも知らされておらず、橋本は、何も考えず取り敢えずの、

「今度からちゃんと知らせて下さいね」

と言うだけだったが、福田は、この福島侵攻に猛抗議した

「ふざけるな!!

この同盟は、北関東の平和を目標に建てた謂わば、「防衛同盟」、それを自ら好き好んで戦争を吹っ掛ければ、根底からこの同盟の意義は失われるぞ!!」

これに対し、一太は、

「要は、これは、北関東平和同盟として宣戦布告したのではなく、ただ単に、一つの独立県として宣戦布告したまでですよ」

とどこ吹く風である

その態度に、さらに激高した福田は、

「群馬県は、同盟の盟主なんだ!!

自分たちとしては、一県だけの話だと思ってても他の県はそうは思わんだろう」

これに、一太は、あくまで冷静に、

「まぁ、しかし、宮城県の東北統一運動という拡大路線に対抗するための先攻防御と見れば、周りにも説明はつきますよ」

と答えると、福田は、怒り心頭なのか思い切り受話器を叩きつけて強引に、通話を切った

暫く、一太は、耳鳴りが収まらなかったが次第に収まってくると、

「乱暴な人だな

まぁ、乱暴な人は躾してあげないとかな?」

と誰に言うでもなく呟いた


宣戦布告から丁度、10日後、一太は、ある人物と電話で会談をしていた

一太「さてさて、越後のマドンナ知事と名高い池田知事が、我々、群馬県に何用でしょう?」

池田「福島県との戦争中に電話してごめんなさいね」

一太「いえいえ

それほどひっきりなしで、戦線を見ていなくても勝利してますから、大丈夫ですよ

さて、今回はどんな御用です?」

池田「いや、あなたが余裕を持っている現在の戦線ですけど、我が新潟県が、群馬県に宣戦布告した場合は、どうなるかしらね?」

一太「はぁ、脅迫ですか…

さて、何がお望みで?」

池田「取り敢えず、我が新潟県との不可侵条約を結んでもらうだけでいいわ

追々、何か思いついたらお願いすることに致しますから」

一太「勝手に、了承した体でお話を持ってかれても困るんですけど…

一つお伺いしますが、栃木県・茨城県も仮想敵国の中には入れられてます?

福島県に我々も集中しているとはいえ、宣戦布告されたら勿論、新潟県の県境にも軍の配備は進めます。それまでに、貴女方は、我々を降伏させられるとでも?」

池田「確かに、正直言うと実は、我々の方が厳しい状況ではありますね

しかし、我々も、宮城県と協議をしているとまでは言っておきましょう。福島県も入れてと言えば、内容は言わなくてもわかるでしょう

ただ、こっちとしても、宮城県の好き勝手にはできるだけさせたくない。だからこそのお互いに利益のある提案をしているつもりですけど?」

一太「…」

池田「まあ、青くてかわいい子がどこまでうまく立ち回れるか見てもいいですけどね

では、ごきげんよう」

一太「ちょっと待ってください

じゃあ、不可侵条約を締結する代わりに少し池田さんも踊りを踊ってくれませんか?」

池田「あら、若い子と踊りなんて久しぶりだわ

ちゃんとエスコートしてちょうだいよ?」

一太「えぇ、勿論…」


一太と池田の電話会談の日の夜、山形県酒田市飛鳥勝浦甲の荒崎海岸の岸辺で群馬県知事の一太、新潟県知事の池田、そして、宮城県知事の村井嘉浩が夜の海を見ながら話していた

池田「村井さん、戦争の準備も整っていない今は、群馬県の福島侵攻は見逃して、これ以上、東北と新潟に手を出さないと約束するのが一番なんじゃないかしら?」

村井「まぁ、そうだな

福島県を県境として策定しておけば、お互い背後の安心はある程度の担保はされるし、いいだろう

ただ、山本知事、これ以上、北上するような真似があったら、その時は、全力をもって対処させてもらうからな」

一太「ありがとうございます

では、福島県は我々がいただきますので、よろしくお願いします

そして、池田知事、お昼の不可侵条約締結案は締結する方向で進ませていただきますね」


翌日、新潟県と群馬県は不可侵条約を締結し、宮城県との間では東北地域と北関東の境は福島県と宮城県の境であることが、酒田宣言によって確認された

福島県の内堀雅雄知事は、呆然とその報せを聞いたという…

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