第3話 Outbursts and consequences~暴発と結果~

1937年5月3日の早朝に、千葉県の太西知事は茨城県に宣戦布告した

勝ち目なんてなかったが、振り上げた拳は最早、振り下ろすしかなかった

茨城県は、すぐさま群馬県と栃木県に参戦要請を出し、両県とも迅速に軍を配備し参戦したため、やはりというかなんというか、千葉県と茨城県の県境は、北上することなく最初のほうこそ、利根川の河川の力も借りて千葉県の防御もうまくいっていたが、群馬・茨城・栃木の三県合同軍の数の多さには、やはり耐えられず、銚子や香取の利根川が突破されると、瞬く暇もなく北西部が制圧され、最初は、市街戦で粘っていた船橋市や千葉市もずるずると後退を続け、両都市が堕ちた同年6月11日に船橋市民文化ホールで降伏文書に署名した

そして、そのまま講和会議に移ったのだが…

橋本「竜ヶ崎市は、元々、茨城県の中にあったものを千葉県が無理やりとっていったものです

ですから、竜ケ崎市は、我々に変換していただくことでよろしいですか?」

一太・福田「意義はない」

福田「ただ、残った千葉県の土地だが、ファシズム政権の現状を鑑みるに、誰かが監督してやらなければならないのではないか?

順当にいけば、唯一、千葉県に接している茨城県が管理したほうが…」

橋本「む、無理ですよ

千葉県の軍事力にさえ負けて、御二人の御力添えを頼んだんですから、もし、大規模な反乱が起こったら…」

一太「では、ここは、我々が管理しましょう

一応、陣営の盟主ですからね」

福田「あぁ、確かに今回の戦争では一番群馬県民兵が死傷者を出していると聞くしな

(群馬が、余計なこと言いだすからお前に管理を任せるといったのに、この愚図が!!

これでは、千葉県は全て群馬県のものだぞ!)」

一太「ただ、一つ条件があります

戦争を遂行するための資源を持っている地域、具体的には、銚子市・成田市・千葉市・山武市・長生市・船橋市・市原市の7都市は群馬県が直接管理し、そこで生産された資源の90%を同盟の中でのみ流通させる

これだと、千葉県は、もし、戦争の道を再び歩むとしても、資源をどこかからか輸入する他なくなりますし、歯向かおうとするならば、一度、ルールを破った千葉県と我々の正当性では、雲泥の差ですからね。各国は、輸出すらしないでしょう。そうなれば、千葉県は、何もしなくても兵糧攻めで陥落するという絡繰からくりです

そして、我々は我々で、独自の閉鎖経済を達成することができる

一石二鳥でしょう?」

橋本「それは、いい考えですね!!

是非、よろしくお願いします」

福田「まあ、いいだろう…

(ほら、言わんこっちゃない

いい考えなわけあるか!!

少しは考えろ!!馬鹿!!

千葉県の資源の財布の口は、群馬県が握ると言っているのがわかってないんだから、こいつはしょうがない男だ)」

一太「そして、残ったいすみ市・名取市・安房市の3都市に群馬県が指導する千葉県庁を置くようにしときます

異論はないですね?」

橋本は、何も考えずに

福田は、悔しさを滲ませながら

二人は、無言で頷いた


このように、群馬県の利益の為といっても過言でないような船橋条約は、以下のようになった

①帝政千葉県は、茨城県に竜ヶ崎市を返還する

そして、竜ケ崎市の復興支援金は98%千葉県が持つこと

足りなければ、群馬県が千葉県に対して貸し付けを行う

②銚子市・成田市・千葉市・山武市・長生市・船橋市・市原市の7都市を群馬県に割譲

③いすみ市・名取市・安房市の3都市に群馬県の傀儡県である千葉県を建てる

そして、その新制千葉県には旧大西派の派閥は追放とする

④群馬県に割譲した7都市の資源は、全て群馬県が所有権を保持する

⑤旧帝政千葉県の保有していた財産の88%は、群馬県5:茨城県3.5:栃木県1.5の割合で没収とする

⑥軍事品の生産は、群馬県が千葉県に対して依頼したときのみ依頼量分だけ作ってよい

⑦これからの千葉県の貸し付けは、群馬県に対してのみ申し込むこと

以上となった


そして、一太が船橋で条約を締結している最中、にとりはひとり、資料に目を通して、

「死傷者は、敵味方総数で、38640人…凡そ、4万人弱の人が亡くなってる

死傷者は、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県の順ね…」

と今回の戦争を整理していた


…そうこうして、千葉県との戦争は終わりを迎えた

帝政千葉県は、誕生してすぐに拡大したが、それが仇となって、終焉への道を歩むことになってしまった

それは、夏の終わりにやる線香花火のように短く儚くも美しい蜻蛉かげろうのようなものだったのだろう

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