第9話 『2.0』サプリメントの解説(1)

『2.5』は歴史が浅いからサプリもまだ少ないが、『2.0』は最初のルールブックから10年間の間に数えきれないサプリが出て把握するのも一苦労である。新規が金かかりすぎて入ってこないというのもリセットして『2.5』になった一因だろう。


【大型サプリメント】

年一回だからリアルタイムで追うのは容易でも後発が揃えるのは大変である。さいわい最後の2冊は特殊環境用なので必要性が薄いが。


『アルケミスト・ワークス』

・新技能「アルケミスト」

・技能解説

・神々の解説

・能力値ポイント制

・種族特徴強化

・アイテム総覧

・ネームドモンスター(ワンオフのボスキャラ)

10年後の『2.5 エピックトレジャリー』に相当するサプリ。本書のうちアルケミスト技能と種族特徴強化は利用率が高かったこともあり『2.5』では基本ルールブック扱いに。アイテムリストはルルブ3冊に分かれていたものが一目でわかるのに加えて新規データもあっる。


『バルバロステイルズ』

・蛮族PC「ドレイク(ブロークン)」「ダークトロール」「ラミア」「ライカンスロープ」「コボルド」のデータ

・大量の魔物データ

・シチュエーション戦闘

 基本はモンスターの総合カタログ、「蛮族」「妖精」といった分類やレベルごとに多数の魔物データが載っている。

 またエモいロールプレイを狙って人族社会に転がり込む可能性のある蛮族のPC用データも初登場している。

 このほか「高低差がある」「見通しが悪い」など特殊状況での戦闘シュミレーションがある。

 本書のPC種族データは廉価な『バルバロスブック』にも再掲されているし、GMが魔物出したければ『モンストラスロア』を2.0に逆輸入してもいいので今から買う必要はないだろう。


『ウィザーズトゥーム』

・世界観としての魔法の解説

・深智魔法

・プリーストが信仰できる神の追加(特殊神聖魔法含む)

・妖精魔法のカスタムルール

・既出含む全魔法をまとめて掲載

・強力マジックアイテム

・ファミリア・妖精・騎獣の追加

 魔法関係の詳細が書かれたサプリメント。ソーサラーとコンジャラーの同時取得で使える深智魔法(使い手を「ウィザード」と呼ぶ)が初登場。このほか妖精魔法の契約の複雑化により、使いこなすと「一人米軍」と呼ばれる万能キャラが生まれることに。アイテム同様ルルブ3冊に分かれていた魔法が一冊で通し読み可能になって使い勝手が向上している。

 問題はアイテム。現在重要アイテムと化している魔符や高レベルファイターが普通に使うイスカイアの魔導甲冑がアイテム本でないサプリにさらりと書かれているから…


『カルディアグレイス』

・新種族「シャドウ」「フィー」「フロウライト」「ウィークリング」「ラルヴァ」

・新技能「ウォーリーダー」「ミスティック」「デーモンルーラー」

・神・アイテム・魔物の追加

・改訂戦闘ルール

 アイテムや魔法などジャンルを特定しない総合サプリ。テーブル上に適当に駒を置くことを想定した従来の戦闘ルールはオンセの画面じゃわかりにくいのか大幅に改訂された上で「簡易(2.5の基本)」「標準(2.5の上級)」「熟練」の3レベルに分けられている。本書の内容の一部は同時期に出た『ルールブック改訂版』に反映されている。

今にして思えば本サプリ導入環境は『ソード・ワールド2.2』と称するべきではと個人的に思っている。

 『アルケミスト・ワークス(アイテム)』『バルバロステイルズ(モンスター)』『ウィザーズトゥーム(魔法)』とデータ面は完成した感があり、これ以降のサプリは各ジャンルのデータを小出しにすることになり全貌の把握が難しいカオス化が進むことに。


『イグニスブレイズ』

・新種族「ハイマン」「ミアキス」「ダークドワーフ」「バルカン」

・改訂戦闘特技

・高レベルキャラ作成

・PC種族の解説

・魔物データ追加

 本書の最大の特徴は戦闘特技の新ルール。「《ファストアクション》は自分で先制取らないとダメ」「置き換えの概念導入で《全力攻撃》が特技枠消費無しで強化」などバランスが大幅に変わっておりもはや『ソード・ワールド2.3』と言ってもよい。戦闘特技の変更なんて『ルールブック改訂版』の時点でやっとけよと思う。というのもサプリメントのデータの大半は「追加」なので持ってない人は無視できるが、今回の戦闘特技のように基本ルルブを「上書き」するタイプはサプリ持ってない人がダメ出しされて「聞いてないよー(by上島竜兵)」とトラブルになるからである。

 リプレイ『バルバロス・ロワイヤル!』から高レベルキャラ作成時の経験値や能力値成長の目安が再掲されている。


『ルミエルレガシィ』

・新種族「ヴァルキリー」「ソレイユ」「レプラカーン」

・アイテム総覧

・改訂騎乗ルール(『ルールブック3改訂版』より)

『アルケミスト・ワークス』以降のリプレイ・サプリを反映したアイテム本の第2弾。なのだがアイテム総覧には名前と参照ページが書いてるだけでアイテムの詳細は出典サプリ頼り。入手方法が限られている(出典サプリで背景を理解する必要がある)流派装備と特産品以外は完全に再掲してくれてもいいだろうに。あとがきの清松氏も「卓にこれ一冊あればよい」ものを目指していたのに。


『フォルトナコード』

 従来の最大レベルである15を超えるキャラクター「超越者」のルールとデータ、その超越者用のシナリオやモンスターが載るサプリメント。

 が、モンスターはレベル25以上がうじゃうじゃいるのにPCはレベルが上がっても17.これじゃ全然強くなった気がしねえ、蛮王をタイマンで倒せるまでレベル上げさせろ!


『エイジ・オブ・グリモワール』

・新種族「ノーブルエルフ」「マナフレア」

・新技能「グリモワール」「アーティザン」「アリストクラシー」

〈大破局〉よりはるか昔の魔法文明時代を舞台にしたセッションのためのサプリメント。この時代の歴史や世界情勢の説明、独自のキャラクター作成レギュレーション(ルーンフォークやルーフェリア信者はいません)、この時代独特のアイテム・魔物データなど。

 実は私、魔法文明のセッションは一度もやったことがない(超越者はある)。世界観の把握だけでも大変なのに新規技能がオリジナルルールの塊でGMの負担が大きすぎて無理もないかと。


【文庫サプリメント】

入手しやすさに配慮した文庫形態のサプリメント。


『ルールブックEX』

・改訂戦闘特技

・熟練戦闘ルール

・深智魔法

・妖精魔法カスタム

・能力値ポイント制

・アイテム総覧

 サプリで増えすぎたルールやデータを初心者向けにまとめ直したもの。「ルールブックちゃんと読んだのにダメ出しされる」トラブル回避のためルール関係は可能な限り載せているが、「ページに限りがあるし詳しくは当該サプリ買ってね」という方針のためデータ関係は「ルールブック1改訂版」と同じ6レベルまでしかなく、最大の地雷である「便乗ファストアクション不可」が載ってないという問題が。戦闘特技は「ルールブック2・3改訂版の記述が否定される=データ全てがルール」として全部載せるべきではなかったか?

 サプリを全部駆使するセッションなんてそうそうないので、サプリ全部持ってる私もコンベンション持っていくのに重宝していたのだが。


『バルバロスブック』

・新規の「ドレイク(ナイト)」「バリジスク」「リザードマン」「ケンタウロス」に加え既出の蛮族全てのPC種族データ。

・蛮族の生態を描写したショートストーリー多数

 従来の蛮族PCは人族に混ざる前提で出されていたが、このサプリは完全な蛮族環境で遊ぶためのもの。といってもPCが人族襲ってヒャッハーではなく一枚岩ではない蛮族が足を引っ張りあう中で成り上がりをめざすシナリオがメインになる。実際サンプルとして収録されたシナリオも地域のボスにトラブル解決を命じられたPCが人族奴隷やゴブリン兵から情報を集めながら隣の領からちょっかいを出す蛮族と戦うというもの。

 ハッキリ言って、これだけ個性的な種族データが多数揃って税抜き900円は安い(今からだと電子書籍しかないだろうが)。2016年は大型サプリメントが出なかったが、内容的には本書と『ディルフラム博物誌』の二つで一つの大型サプリメントといったところか。


『ラクシアゴッドブック』

・新種族「センティアン」

・神話のショートストーリー集

・『2.0』全ての神の解説とその特殊神聖魔法

 サプリメントやリプレイ等に登場したラクシアの神を網羅した本。プリーストは自分のロールプレイとの相性を考えて信仰する神を選ぶ必要があるが、自分の神の特殊神聖魔法がどのサプリにあったか探さなくて済むのはありがたい(『2.5』の神はいまのところ『メイガスアーツ』でフォローされているが)。

 世界観的には「悪の総大将」の扱いを受けているダルクレムだが、エピソードからは男のロマンを感じる。神になる前のカオルルウプテとのエピソードは熱血ヒーローっぽいし。


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