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廊下を歩いていると、


「聞いてねーよ!!」


教室から大きな声がした。


「おはよう。」


「あっ、おはよう。」


真奈と挨拶をする。


「何か大きい声したけど?」


「あぁ、佐々木君ね。

テストが近いって聞いてないってさ。」


「私も聞いてないって思ってたけど。」


「アハハ。」


一緒に笑ってごまかそう。


「勉強はどう?」


「ぜーんぜん、やってない。」


「私も。

ここの学校よく入れたなって思う。」


「それは、私も思う。」


「でも彼氏と学年違ったらキツイよね?」


「何それ?

留年するって事?」


「ありえるでしょ……。」


「無いとは言えない……。」


真奈も私も不安になった。


「何でそんな暗い表情してるの?」


桜井君が真奈に話しかけた。


「テスト近いから。」


「あれ?

勉強苦手なの?」


「うん。」


「教えるよ。」


「助かる!

沙希はどうする?」


「え?」


「皆で教わりたいでしょ?」


「うん。」


弓弦に教わりたいとは言えない。


「沙希ちゃんは彼氏に教わるんじゃない?」


桜井君がそう言うと、


「あっ、そうだ。

あの人、頭がいいんだ!」


真奈が思い出したかのように言う。


「でもさ、弓弦、怪我してるんだよね?」


私は弓弦の怪我の心配をしてしまう。


「そういえば、さっき会ったぞ。」


堺君が言う。


「弓弦に会ったの?」


「うん。」


「具合悪いらしいぞ。」


「え?」


「病院行くって行ってた。

痛いのかな?」


心配で、たまらなくなる。

だからって授業をサボれない。


「気になるなら、帰りに家に行ってみたら?」


「うん。」


家が遠いわけではないから、行ってもいいんだけど、勉強もしたい。

あまりにも習った事を忘れていて、ガッカリする。


「桜井君、皆に教えるなら、私にも教えて。」


私がそう言うと、


「うん、いいよ。」


桜井君は笑顔でこたえてくれた。


「俺、教わっても分からないかもな。」


佐々木君がボソッと言うと、


「進級したいなら、どうにかしないとね?」


桜井君はそう言った。

そうだ、私もどうにかしないとね。


「僕も一緒に勉強していい?」


園田君が恐る恐る言う。


「やろう、皆でね。」


桜井君がそう言うと、園田君が嬉しそうに微笑んだ。



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憧れと友情と愛情と……。 φまりかφ @marika-room

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