8の1

弓弦に家に送ってもらった後で気付いた。

もうすぐテストが近いって。


「あぁ、どうしよう。

習ったの全部忘れてるかも……。」


そう呟いて、焦ったけど……。

やっぱり私は疲れていたみたいで。

いつの間にか寝ていた。

翌朝、目覚めるまで爆睡していて、夕食も食べていなかった。

朝から、お腹ペコペコで、大好きなおにぎりを三つ食べた所で、玄関のチャイムが鳴る。


「おはようございます。」


ママと誰かが話している。


「沙希、お迎えよ。」


「分かった!」


弓弦が来たにしては、声が違う。

慌てて準備を済ませて、玄関に行くと、


「おはよう。」


「あっ、おはよう。」


咲真が立っていた。


「弓弦、朝から病院行くから代わりに来たよ。」


「そうなんだ。」


ちょっとガッカリした。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


普通にママに見送ってもらいながら歩く。


「あのさ。」


咲真が何か言いたそうだ。


「何?」


「昨日はありがとう。」


「うん。」


「沙希が美月に、ちゃんと話をした方が良いって言ったんだって?」


「うん。」


「本当にありがとう。」


「うん。」


うん……しか言えない。


「美月、沙希の事が頼もしかったって言ってた。」


「咲真も頼もしくなってよ?」


「俺、頼もしくない?」


「まぁ、少しはね?」


「弓弦が頼もしすぎるんだって?」


「確かに。」


咲真と笑った。


「もし弓弦が学校来なければ、俺、送って行くからね。」


「彼女いるのに、大丈夫?」


「彼女と友達、どっちも大事だよ?」


「そうだけどさ。

それで、弓弦、何で病院?」


「あぁ、怪我の消毒とか言ってた。」


「通わないといけないような怪我なんだね?」


「まぁ、心配するなって。」


心配するなって言われるけど、心配になる。


「それより、もうすぐテストだよな?」


「うん。」


「勉強してねぇよ……。」


「私も。」


「沙希には申し訳ないけど、弓弦に教わりたいな。」


「教わればいいじゃん?」


「でも沙希も教わるだろう?」


「そうだね……。」


弓弦の教え方が上手だから、教わりたいのも分かる。


「一緒に勉強会でもいい?」


「うん。

でもクラスの子とも勉強するかも?」


「あぁ、沙希のクラスの桜井君だっけ?

弓弦と同じくらい頭がいいらしいよ?」


「桜井君なら話せるから聞いてみる!」


「そうだね、それが安心だよ。」


同じクラスの人に聞けるのは心強い。


「じゃあ、俺、あっちだから。」


「うん。

ありがとうね。」


「おぅ、またな!」


教室が離れているから、校舎に入ったらすぐにお別れ。

それは仕方がない。

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