7の5

咲真と美月が帰った後。

弓弦と二人きりになった。


「沙希、ありがとう。」


「え?」


弓弦にお礼を言われる事したかな?


「どうやって、二人を話させようか迷ってたんだ。」


「そうなんだ?」


「まさか、こんなすぐに話が済むとは……な。」


「確かに……。」


もうちょっと時間のかかる話だと思ってた。


「それと……。」


「ん?」


「さっきゴムの事言ったじゃん?」


「……。」


「持ってるけど、まだ使う気ないから。」


「そ、そんなの当たり前じゃん!」


「そう言うと思ったよ。」


弓弦はちょっとだけ悲しそうに笑った気がする。

でも私には勇気が無い。


「俺、沙希が言うまで待つわ。」


「え?」


「無理矢理抱こうと思えば出来るよ?

でも、シたいって言うまで待つ。」


「……。」


「そんな日来るか分からないけどな。」


何て言ったら良いか分からない。


「でもさ、彼女、キレイになったよな。」


「え?」


「さっき、久しぶりに会って思った。

咲真のチカラだな。」


「確かに美月、キレイになった。」


「まぁ、俺は一途だけどな。」


「……。」


私は拓哉君って連呼してたんだっけ?

弓弦、ヤキモチ妬いてたのかな……。


「拓哉君には言うのか?」


「え?」


「付き合ってるとか。」


「考えてなかった。」


「二人で歩いてるの見られるかもよ?

手を繋いでいても友達って言うのか?」


「……。」


そうだ。

同じ街で暮らしてたら、会ってしまうかもしれない。


「ちゃんと言った方がいい?」


「沙希に任せるよ。

沙希の従兄弟だからな。」


「……。」


「ちゃんと挨拶しろって言うならするよ?

今までライバルと思ってたから、挨拶なんてする気無かったけど。」


「ライバルって……。」


「ライバルだろう、好きな女が片思いしてるって。」


「あぁ……。」


拓哉君を好きな気持ちは本物だった。

一緒に暮らしたいと思ってた。

でも、弓弦と話してみてわかった事がある。

もし、拓哉君が私にキスしようとしたら、私は拓哉君を嫌いになりそう。

弓弦なら、嫌いになったりしないのに。

その差が何なのか分からないけど、きっと弓弦のおかげなんだと思った。


「沙希、もう帰る時間?」


「うん。」


「送って行くよ。」


「近いし、悪いよ。」


「俺が一秒でも長く居たいだけだよ?」


「……。」


一秒でも長く……って大袈裟だと思った。

でも本当は私だって一緒に居たいんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る