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皆の所へ弓弦と行くと、堺君が三角巾で右腕を固定しているのが見えた。


「あれ、捻挫だから、大丈夫だよ。」


弓弦がそう言ったけど、気になる。


「俺、クラスに戻るね。」


「うん、ありがとう。」


弓弦が去って行くと同時に、堺君が来た。


「おはよう。」


「おはよう。

手、大丈夫?」


「ちょっと捻って腫れただけだ。

心配ないよ。」


「何かごめん……。」


「いやいや、沙希ちゃん悪くないし。」


私達の事に巻き込んで申し訳ないって思う。


「あっ、そういえば相手の男は?」


「平気じゃない?」


「え?」


「気を失ったのは自分で転んだから。

付いていた血は弓弦の血。」


「えっと……。」


「俺達はボッコボコになんてしてないよ?」


「……。」


「弓弦のキズは出血のわりに、キズが浅いみたい。

大丈夫だよ、その内に消えるだろうな。」


消えるとは言え、出血したと聞くとゾッとする。


「それより、沙希ちゃん泣いたんじゃない?」


「えっ?」


「目が腫れてるよ?

冷やした方がいい。」


「ありがとう……。」


堺君はとても優しい。

弓弦とは違う優しさだと思う。


「はい、これ。」


園田君が濡らしたタオルを持ってきてくれた。


「堺君と話してるの見えて、もしかして目が腫れてる?って思ってね。」


「……。」


「大丈夫?

ご飯食べれる?」


「うん、食べるよ。

ありがとう。」


園田君は心配そうに私を見ている。


「お前、気が利くじゃん!」


堺君が園田君に言うと、


「そんな事ないよ。」


園田君は恥ずかしそうに笑う。


「沙希!

ご飯!」


真奈が叫んでいる。


「はーい!」


返事をして真奈がいる方に向かう。

真奈の隣には桜井君がいて、手伝っているのが分かった。


「夫婦みたいだな。」


真奈と桜井君を見て、佐々木君が呟く。

佐々木君はドカッと座って、何にもしてないみたいで、


「お前は何か手伝えって。」


桜井君にやんわり注意された。


「だって、眠くて頭が回らんもん。」


佐々木君が大あくびをする。


「頭から水かけてやろうか?」


堺君が笑いながら言うと、


「お前、マジでやりそうで怖いぞ。」


佐々木君がボソッと言った。


「あっ、沙希ちゃん寝癖付いてる……。」


園田君は私の髪を見て、慌てている。


「平気だよ、いつもの事。」


私はそう答えた。

だって、気にならないもん。


「じゃあ、皆、揃ったから食べよう!」


桜井君がそう言うと、皆が席に着いた。



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