6の1

「沙希~!」


薄暗いテントの中で。

ぐっすり寝ている私には、呼ぶ声が小さく聞こえてた。


「おい、起きろって。」


この声は……弓弦?!

何で弓弦の声がするの?って思って、ビックリして飛び起きた。


「おはよう!」


「おはよう……。」


とりあえず挨拶をして気付く。

弓弦って救急車で運ばれたよね?


「弓弦、何でいるの?」


「何でって、お前が起きないって、皆が困ってたから。」


「違う……病院は?」


「あぁ、別にたいした事ねぇよ。」


「どこ怪我したの?

見せて!」


「見なくてもいいじゃんか。」


「ねぇ、どこよ?」


弓弦の怪我が心配で、自分の目で確かめたかった。


「おい、危ないって!」


気付いたら、私は弓弦を押し倒していた。


「朝から押し倒すなってば。」


弓弦がそう言いながら笑う。


「ご、ごめん……。」


弓弦の上にいた私は、弓弦からおりた。


起き上がった弓弦は、


「大袈裟に見えるけど」


そう言いながら、左手の甲を見せてくれた。

ガーゼが貼り付けてある。


「心配するな、かすり傷だから。

もう血も出てないし。」


「本当に?」


「うん。

まぁ、かすり傷でも多少痛いけど。」


「……。」


「心配するなって。」


弓弦は私を抱きしめた。

そうしたら、何故か涙が溢れて来た。


「どうした?

泣いてるの?」


「泣いてない……。」


「泣いてるじゃん?」


「泣いてないもん。」


泣いてるけど、泣いてないって言ってしまう。


「ごめん、心配かけて。」


「……。」


「これからも心配かけるかもしれないけど。

彼女やめるとか言うな?」


「急に何でそんな……。」


「いや、こんな思いさせられるなら、もうヤダとか言われるかと……。」


「言わないもん。」


「そっか。」


弓弦が私の頭を撫でる。

それが心地よくて、眠くなってきた。


「沙希?」


「……。」


「おい?」


「ん?」


「寝るなって。

皆が待ってるぞ。」


「え?」


「もう、メシの時間だよ。」


「あっ!!」


そうだ。

一緒にテントにいた真奈がいない。


「真奈ちゃんが、ギリギリまで寝かせてあげようって言ってた。

片付けだけは、ちゃんと手伝えよ?」


「うん……。」


「じゃあ、行こう。」


「うん。」


弓弦が私に右手を差し出す。

私はその手を握った。

二人でテントを出る。


「うわっ、眩しい……。」


「いい天気だな。」


ビックリするくらい、良い天気だ。

清々しい朝と言いたいけど、やっぱり弓弦の手が気になる。

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