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「沙希は彼氏が病院に運ばれたって聞いて、どう思ったの?」


真奈に言われるけど、分からない。


「どうだっけ?」


思わず真奈に聞いてしまった。


「心配したとか言いなさいよ。」


「あっ、そうか。

でも担任がたいした事無いって言うから。」


「たいした事無いつもりが、たいした事あったらどうするの?」


「え?

そういう事ある?」


「分からないわよ、例えばの話!」


「病院に行きたいって言うかな?」


「ダメって言われたら?」


「すねる!」


すねるって言った瞬間に、真奈が爆笑した。

咲ちゃんはキョトンとしている。


「ほら、沙希が面白いから、高橋さんの涙が止まったわよ?」


「え?

真面目に話してるじゃん?

面白くないって。」


「こりゃ、彼氏が大変だな。」


真奈が苦笑している。


「高橋さん、沙希はこういう子だから、今はアナタを責めたりしないよ?

でも私ならアナタに平手打ちしてるかもしれない。」


「……。」


「高橋君はそういう女を選んだのよ。

高橋さんも沙希の立場なら、平手打ちするって思わない?」


「思う……。」


「あまり思ってる事を上手に言葉に出来ないから、イラッとさせるかもしれない。

でも、アナタと親戚になるかもしれない。」


「……。」


「まぁ、頑張って。」


真奈がそう言うと、咲ちゃんの背中を優しく擦った。


「本当にごめんなさい。」


咲ちゃんがまた謝る。


「それはもういいって。

弓弦と堺君が帰ったら、二人と話して。」


私がそう言う。


「ねぇ、もうそろそろ自分のテントに帰った方がいいんじゃない?」


急に真奈が言い出すと、外で、


「高橋咲さん、いますか?」


そう呼ぶ声がした。


「うわっ、担任来ちゃったかも?

どうしよう?」


咲ちゃんが慌てている。


「一緒の班の子に、ここに来るって言ったの?」


真奈が冷静に聞く。


「言ってない。

トイレ行って来るって言った。」


「じゃあ、私に任せて。

一緒に外に出よう。」


「……。」


「ほら、早く!」


真奈が咲ちゃんと外に出る。


「こんな所で何をしていたんだよ?」


ちょっと怒っている先生らしき声がする。


「先生、すみません。

彼女、突然生理になっちゃって。

たまたまトイレで会って、うちならテント近いから、生理用品取りに来て。」


真奈がそう言うのが聞こえた。


「そうなのか?

それにしても長居してないか?」


疑っていそうな先生らしき声がした。


「お腹痛くて歩けなくて、落ち着いたらテントに送って行こうと思ったんです。

すみません!」


真奈の声がする。


「そうなのか?

お腹痛いのか?」


先生らしき声が穏やかになって来た。


「痛くて、涙出てきちゃって……。」


咲ちゃんの声がする。


「そうか。

とりあえず、クラスの子が心配しているから戻ろう。」


「はい。

心配かけてごめんなさい。」


咲ちゃんは、先生に連れられて、テントに帰っていった。


「危なかったぜ。」


そう言いながら、真奈がテントに入ってくるから、思わず笑ってしまった。










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