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「今回の事も、本当は先生が見つけてたら良かったのにって、思ったんだ。」


先生が悲しそうに言う。


「たまたま、堺君が見つけちゃったんだよ。」


桜井君が言うと、


「生徒を守るって難しいな。」


そう先生が言った。

私達は言葉を失った。


「とりあえず、今晩は皆、寝ようか?」


担任が突然話を変えた。

寝られないよね……多分。


「先生じゃなければ、もっと皆と話したりしたいんだけどさ。」


そう言った時に、


「そろそろ、緊急会議の時間ですよ。」


そう言って、あまり見たことの無い先生が入ってきた。

いかにも体育教師のような、色黒でジャージ姿の先生だった。


「あっ、すみません。」


「子供達と距離が近すぎてませんか?」


「いや、そんな事は……。」


「とにかく先生達、待っていますよ。」


「分かりました。

すみません。

生徒達をテントに送り届けてから、行きます。」


「じゃあ、先に行きますが。

油を売る時間は無いですよ。」


「分かりました。」


嫌味ったらしく色々言われる担任を助けたいと思った。

でも何も言えなくて悔しかった。


「じゃあ、行こうか。

女子、男子の順ね。」


何で女子からなのか分からなかった。

後から分かったのが、女子二人と先生で放課後に雑談をしていたら、さっきの嫌味っぽい先生から色々と言われた事があったらしい。


「若い女子が好きだからとか言われても、面倒だからな。」


担任がボソっと言ったのを、笑っていいか分からなかった。

特に話をする事も無く、私達はテントに辿り着いた。


「二人共、眠れないかもしれないけど、目を閉じて横になるだけでも違うからね。

どうしても眠れなかったら、明日の朝、言って。」


担任がそう言うと、


「僕、もうすでに寝不足でーす。」


園田君が言うから、皆が笑った。


「何で寝不足なの?」


先生が一応聞くと、


「佐々木君のイビキがうるさいでーす!」


って、園田君が言うものだから、佐々木君以外、笑っていた。


「女子の前で言うなって!

行くぞ!」


佐々木君は、園田君を手を掴んで歩き出した。


「じゃあ、またね。」


桜井君が笑顔で真奈に言う。


「うん。

またね。」


真奈が笑顔で言う。


「じゃあ、行こうか。

二人共、また明日ね。」


先生はそう言うと桜井君と歩き出した。

そして、私と真奈はテントに入ろうとしたのだけど……。







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